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・作家の五木寛之さんと、静岡県・登呂遺跡の発掘を手がけた考古学者、大塚初重さん
(明治大学名誉教授)が、絶望的な戦争体験について語り合った『弱き者の生き方』が出版された。
極限状態でむき出しになる人間の弱さと、全力で生きることの意味を知った2人の対談は極めて重い。
戦後、日本考古学の礎を築いてきた大塚さんだが、戦争で味わった苦悩は、生死をかけた
引き揚げ体験を持つ五木さんの心を揺さぶった。
〈脚にしがみついてくる戦友を、私は両脚で燃え盛る船底に蹴り落としたんです〉と大塚さんは
本書で打ち明ける。大正15年生まれの大塚さんは海軍気象部へ入り、18歳のときに戦地へ
向かうため乗り込んだ輸送船が、済州島沖で撃沈される。積んでいた魚雷が爆発、船体は炎に
つつまれた。助かるためには甲板に上がるしかないが、階段は吹っ飛んでいる。大塚さんは目前に
ぶら下がっていたロープに飛びついた。
〈カエルのように上に上に上がろうとすると、だれか私の脚にしがみついてくる人がいるんです〉。
大塚さんは船底へ落とされないよう、無我夢中で彼らを振り払っていた。〈まさに芥川龍之介の
「蜘蛛の糸」の世界、地獄ですよ〉
一方、五木さんは昭和7年に福岡県に生まれ、まもなく家族とともに朝鮮半島へ。終戦時は
12歳で平壌にいたが、ソ連兵による略奪や暴行を目の当たりにしながら、帰国を目指した。
〈ソ連兵に「女を出せ」と言われると、嫌がろうがなんであろうが、トラックからだれか女性を押し
出すようにして出すしかない。その女性を人身御供にして、われわれは三十八度線を越えたのです〉
2人が語る戦争は生々しく、過酷だ。はかない人間の姿がそこから浮かぶ。戦争が過去になり、
平和で豊かな社会を享受しているはずの現代日本だからこそ、大塚さんは自分たちの体験を
若い世代に伝えたいと訴える。
「最近、親殺しや子殺し、自殺など忌まわしいことが続いています。今の日本はピンが1本
抜けている。人間は弱く、すぐに絶望しますが、それでも生きる雑草のような強さを持って
ほしい」(猪谷千香) (一部略)
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