07/07/07 04:44:02 xjDp6DEk0
彼女がウチにお泊まりに来た日だった。
さて、コトを済ませて疲れたのか、彼女はすぐにベッドで眠りこけてしまった。
ベッドのそばには俺の机があり、前日までプラモ作りをしていたその机は結構散らかっていた。
寝付けなかった俺はひとり、深夜TVを見ながら、
食卓にしているテーブルでコーヒーなんかを飲んでいたんだが、
突然ベッドでドン!と音がした。彼女が勢い良く寝返りをうったのだった。
その時の光景は今でも忘れることができない。
色々な工具が入った鉛筆立てがゆっくりとベッドの方へ傾いていくのがわかった。
咄嗟にコーヒーカップを放り出し、やがて落ちていく鉛筆立てを受け止めようと必死に手を伸ばす俺。
その時の動きは信じられないほどにゆっくりでもどかしく、コマ送りのような風景だった。
俺の指先のほんの数cm先を素通りした工具たちは重い鋼鉄製の鋭利な部分を
意地悪く下に向け、降下していった。
そこから先はスナップショットの連続のような印象だった。
オルファの曲線用のカッターの凶暴な切っ先が彼女の側頭部に仁王立ちしていた。
飛び起きてそれを振り払う彼女。バッと血しぶきが立ち、続いて噴水のような血流。
ベッド脇のスタンド光に照らされたそれらは奇妙に美しかった。
その後は実ははっきりと覚えていない。
泣き叫ぶ彼女に服を着せ、タオルを頭にぐるぐる巻にし、彼女をおぶってアパートの階段を駆け下り、
車に飛び乗って救急指定病院に駆け込んだ。
幸いなことに傷はそれほど深くはなく、今ではその跡もほぼわからないが、髪を耳上にかき上げると、
一筋のハゲが一瞬現れる。
本当に本当に申し訳ないことをした。今では笑い話にしてくれている彼女の明るさが救いだ。