07/04/28 12:00:16 0
・憲法が来月三日、満六十歳の誕生日を迎える。人間で言えば、還暦である。明治憲法よりも
長生きしている。この長寿の憲法を、安倍首相は一刻も早く死に追いやりたがっているらしい。
改憲手続きを定める国民投票法案を強引に今国会で成立させるのにほぼ成功すると、今度は
憲法が禁じている集団的自衛権の行使について有識者懇談会を発足させた。メンバーは行使
容認派ばかりで、結果は目に見えている。
「戦後体制からの脱却」を看板にし、改憲を公言している安倍首相。最大の狙いが、戦争を
放棄し戦力を持たないとうたった九条を改めることにあるのは明らかだ。
確かに、これまで自衛隊の位置づけや海外派遣などをめぐって、へ理屈とこじつけの解釈で
九条を空洞化させる、いわゆる「解釈改憲」がなし崩しに重ねられてきた。
九条に込められた平和への理想も、現実とのズレがこれほど大きくなってしまったのだから、
憲法の方を変えるべきだ、との主張も一理ある。理想を現実に合わせろ、というわけだ。
しかし、それは理想を捨てろ、というに等しい。理想の旗を掲げ続けることは、無駄なのだろうか。
この旗について、評論家の加藤周一さんはこう述べている。「(世界平和という)遠大な理想に
向っての曲折にみちた人類の歩みにおいて、一歩先んじたのが、日本国憲法の理想主義で
あろう」(「夕(せき)陽妄語(ようもうご)」朝日新聞社)。
私たちには、何よりも世界に誇れる実績がある。日本はこの六十年間、ただの一度も他の
国と戦火を交えず、武力によって一人として殺したこともなく、一人として殺されたこともない。
先進国の中では日本だけである。
旗は風にあおられ、ズタズタに破れてはいるが、人類の理想という確かな重しがあったから
こそ、揺るがず歩んでこれた、と私は思う。世論調査でも大半の人が、九条について「戦後の
平和と繁栄に役立った」と認めている。
還暦を迎えても、今は誰も若々しい。九条だって、まだまだ若い。無理やり寿命を縮めてはならない。
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