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・被告の逆転勝訴だが、被告にとっては敗訴以上に厳しい司法による糾弾と受け止めるべきだ。
第二次大戦中、日本に強制連行された中国人男性らが西松建設を相手取って損害賠償を
求めた訴訟の最高裁第2小法廷判決。強制連行の経緯のほか、劣悪な労働環境や原告の
心身の苦痛などを認定し、被告側の非を明確にしたからである。
注目されたのは、72年の日中共同声明によって戦争被害を受けた個人の賠償請求権が
放棄されたのかどうか、についての司法判断だ。同小法廷は「中国国民は裁判で賠償請求が
できなくなった」と初めて判示し、戦後補償問題に司法として決着を付けた。判例となるので、
今後は中国人ばかりかアジアの人々が法廷で戦争被害の賠償を請求する道は事実上、
閉ざされたに等しい。
注視すべきは、判決が「請求権を実体的に消滅させることまでを意味しない」との判断も
示したことだ。異例の付言で西松建設を含む関係者に「被害救済に向けた努力をすることが
期待される」と、道義的責任に基づく救済を促した。
西松建設はもちろん強制連行に加担した他の企業も、付言を痛切に受け止めねばならない。
勝訴したからと付言を黙殺すれば、国内外の世論が許さないのではないか。
加害企業の責任については、日本人全体でも考えていかねばならない。加害企業の
社員でさえ強制連行の事実を知らないともいわれるが、臭いものにふたとばかり事実を
隠ぺいし、平然としてきた日本人の姿勢が、アジアの人々の反発を招き、日本の評価を
おとしめていることにも気がつかねばならない。歴史に無知な人が多いために、国や
加害企業の責任が見逃されてきた面もある。
歴史を直視することから始めたい。強制連行については今も隠匿されている資料があると
いう。国や加害企業は持てるすべてを明かし、公正な評価に委ねるべきではないか。
また、加害企業は日本全体に影響が及ぶ問題と認識し、被害者の救済に乗り出さねば
ならない。ドイツでは政府と企業がナチス時代の強制連行被害者に補償金を払う基金を
創設したことなどを、参考にすべきだろう。(一部略)
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