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「そら、高島岬が変わるぞ」と言われ、江戸末期の探検家・松浦武四郎が遠くを眺めた。小さな岬が膨らみ、
天へ伸びる。不思議な「高島のお化け」である。
▼小樽沖で見た蜃気楼(しんきろう)だ。「三航蝦夷(さんこうえぞ)日誌」などに書いている。蜃気楼は一般
に、上下の空気層で温度差が大きいとき起こりやすい。冷たい海の上を暖かい風が吹く春にも、各地で見られる。
▼「事件は検察官らがつくり上げた蜃気楼だ」。最終弁論の際、泣きながら検察側を非難したのはライブドア事件
の堀江貴文被告だった。不利な証言に対しては「口からでまかせ」と反論したが、東京地裁は「反省が全くない」
などと実刑判決を下した。
▼堀江被告を「時代の寵児(ちょうじ)」ともてはやした人もいた。その印象も蜃気楼だったのだろう。最先端を
走るイメージ戦略で個人投資家を引き付け、株式の大量分割を繰り返す。実像を膨らませて天へと伸ばす姿は、
粉飾決算にも共通している。
▼堀江被告に実刑判決が出ても、同じような錬金術が幅を利かす社会の仕組みは変わっていない。マネーゲーム
のお化けたちは何を生産するわけでもなく、たとえばビールや即席めんメーカーの株に姿を変えたりしながら、
膨張の機会をうかがっている。
▼ライブドア事件は、まじめに働く人が報われない、格差社会の象徴でもあった。この点も、上下の空気層に
温度差があると出現する蜃気楼にやや似ている。
■ソース(北海道新聞)
URLリンク(www.hokkaido-np.co.jp)