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・「ネットや携帯がリアルな人間関係を代替している結果、社会問題が表に出てこなくなって
いるのではないか」。就職氷河期世代のフリーターからそんな話を聞いて、考えさせられた。
就職氷河期世代とは、就職難が続いた1994年から2004年に学校を卒業した人たちである。
日本では新卒一括採用時に就職を逃すと、「実務経験」が積めないため、ニートやフリーターに
甘んじることになりかねない。
何人かの就職氷河期世代に話を聞いたところ、「このままほっておくと深刻な社会問題になる」
という声がいくつかあった。「暴動が起きるかも」という過激な声も聞かれた。
ただ、現状ではそれほど大きな騒ぎにはなっていない。それは、ネットや携帯によって、
「孤独」が和らげられているからではないか、というのである。「モルヒネ」みたいなものだと。
たとえば、30歳前後の「年長フリーター」になってしまうと、就職している旧友とは会いづらいし、
フリーターをしている旧友とも微妙に話しづらい。結局、リアル世界では同居している実家の親と
バイト仲間数人くらいしか交友関係がない。それで社会性を満足できる人は少ないだろう。
そこで、ネットで人間関係を満たしていく、というわけだ。
ネットの人間関係については、所詮、バーチャルな関係であり、リアルな人間関係を代替する
ものではないという意見は以前からある。それどころか、たとえば集団自殺や依頼殺人のように
ネットの人間関係が、犯罪や事件を誘発するという負の側面を強調する意見も存在する。
もっとも、ネットの人間関係を出発点にして、リアルなビジネス関係が生じたり、恋愛関係から
結婚にまで発展するケースも数多くある。ネット限定の人間関係であっても、有意義な情報交換や
議論といったものは広く行われている。
ネットが普及した時期と、就職氷河期が長引き、ニートやフリーターが増えていった時期とは
重なる。彼らが40代、50代になったときも、ネットの人間関係は途切れることなく、社会性を
満足させることができるのだろうか。(一部略)
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