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★記者の目:慰安婦問題、日本のメッセージ=岸俊光
・歴史問題はなぜ決着しないのか。再燃した従軍慰安婦問題に、こんな思いを抱いた人は多い
かもしれない。今月末に解散するアジア女性基金の理事長・村山元首相は、最後の記者会見で
政府が引き続き元慰安婦を温かく見守るよう訴えた。3年前、私は基金理事・呼びかけ人の
大沼保昭・東大教授が担当する慰安婦問題のゼミに講師として参加してから、この難問と向き
合ってきた。日本は今どんなメッセージを出すべきか。大局を見失わない和解の道を考えたい。
毎回、多彩なゲストを招いて1年にわたり開かれたゼミのことは、05年2月9日付当欄で紹介した。
村山理事長や学者ら基金関係者をはじめ「左」「右」の基金批判派にも呼びかけ、幅広い論客を
集めることができた。昨年11月には基金のシンポジウムFINALを取材した。米国からのパネリストが
中間選挙での民主党の勝利を受けて予想した通り、米議会で慰安婦問題が浮上することになった。
ゼミに招いた3人の歴史家の意見が分かれたのも、いま議論のある慰安婦への強制の有無だった。
それぞれの見方を要約すると、(1)慰安婦の募集、移送、管理に軍が深く関与していたのは資料から
明らかであり、そのうえで個人の証言を検討したらよい(2)奴隷狩りのような強制連行はなく、通常の
募集で集められた。レイプなどの個人犯罪の多くは既に処罰されている(3)システムは軍が主体と
なって作られたが、性暴力の土壌や従的な業者も問題にすべきだ--となる。
私は直接的な資料はないかと尋ねたが、一人からは「公文書に強制しろなどとは書かない」という
答えが返ってきた。今後も決定的な資料が出る可能性は低いだろう。さらに難しいのは実証史学の
精密な研究でも解釈の幅が残ることだ。
政府は元慰安婦16人に聞き取り調査を行い、強制性を認めた「河野談話」を93年に発表した。
談話作りにかかわった石原元官房副長官はこう述べている。
「強制性を裏づける資料は出てこなかった。証言を基に内閣の総意として判断したが、彼女たちが
作り話をしているとは思えない」(>>2-10につづく)
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