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初対面の人たちと仕事でご一緒するとき、その場にいる人たちに、自ら名刺を配って挨拶
に回る人と、挨拶されるがままに自らは動かない人と、その真ん中で適当に流す人がいる。
シンポジウムのパネリストや、討論番組の出演者という立場で、私はそういう場面によく
出くわす。ちなみに私は適当なタイプだ。挨拶することもなく討論番組で共演することに
なったのが、片山さつき議員だった。氏は私のイメージどおり自らぺこぺこと全員に挨拶
して回るタイプではなかった。ゆったり椅子に背中をもたせかけ、じっと周りを見渡していた。
私はそんな氏を観察していた。皆がそれなりの挨拶を済ませたものの、それでもなおほぐれ
ない空気の中、それぞれになにか言葉を探そうとしている時だった。ある女性が氏に言った。
「片山さんは美人ですね」
それはあまりに唐突だった。互いを探り合っている時に投げかけるには不適切というか、
少なくとも喫茶店ならいざ知らず、会議室で発言するには違和感がある言葉だった。私は
瞬時に氏の表情を見た。氏は表情を崩すこともなく相手を一瞥した後、視線をそらして吐く
ように言った。
「意味わかんない」
私は軽い衝撃を受けた。「美しい」と言われて「有難う」でも「あなたこそ」でも「そんなこと
ないわ」でもなく、氏は確かに言ったのだ。「意味がわからない」と。私にはまだその言葉
の持つ衝撃のようなものを分析しかねていた。
本番が始まった。議論が飛び交う中で氏の個性が見え始めた。氏の発言には笑顔は
なかった。相手の発言への配慮よりも、自分の発言を中断されることに怒りを隠さなかった。
それは一見ふてぶてしくも見え、女性的好感度とは対極にあるような議論の仕方だった。
そう映るのは、氏以外の女性たちの多くが、笑顔や配慮や謙虚を議論の場にすら持ち込
んでいたからとも言えよう。私もその1人だった。 (>>2-5に続く)
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