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コンビニや居酒屋に置いてある無料の求人情報誌は、どのページも「スタッフ」大募集だ。出前といわずに
デリバリースタッフ、警備はセキュリティースタッフで、窓ふきはウインドークリーンスタッフと呼ぶ。
若ければ、お金はなくても可能性がある。それぞれの夢へと時給千円からの出発だ。でも、不安定な
「スタッフ」ばかりを転々とするとなれば話は違う。短期のアルバイトで食いつなぐフリーターは、ワーキングプア
(働く貧困層)の象徴となった。
「はたらけど はたらけど猶(なお)わが生活(くらし)楽にならざり ぢつと手を見る」。石川啄木がそう詠んだ
のは明治43年(1910年)夏、24歳だった。前年、東京朝日新聞の校正係に正規採用されており、生活苦は
浪費が一因といわれる。
「個人的な事情はあったにせよ、時代や社会の貧しさを詠み込んだからこそあれほどの共感を呼んだ。いま、
この歌が盛んに引用されるのは時代が悲しくつらいからでしょう」。ニートなどの社会病理に詳しく、啄木研究者
でもある明治大学教授、池田功さんの解説だ。
短歌の腕を見込まれた啄木は、ほどなく朝日歌壇の選者に登用され、この作品を含む最初の歌集『一握
(いちあく)の砂』が出版される。ただ、彼の人生の残り時間はあと1年だった。
日本の労働者の3割はパートやアルバイト、派遣などの非正社員だ。就職氷河期に定職を逃した25~34歳の
フリーターは約100万人いる。国会での格差論議を大急ぎで具体策につなげたい。青壮年が、じっと求人誌を
見ながら老いていく国が「美しい」はずもない。
朝日新聞 【天声人語】2007年02月26日(月曜日)付
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