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最判第二小法廷判決平成2年7月20日民集第44巻5号938頁
裁判官がした争訟の裁判に上訴等の訴訟法上の救済方法によって
是正されるべき瑕疵が存在したとしても、これによって当然に国家賠償
法一条一項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責
任の問題が生ずるものではなく、当該裁判官が違法又は不当な目的を
もって裁判をしたなど、裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに
背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情がある場合に
はじめて右責任が肯定されると解するのが当裁判所の判例月一二日
第二小法廷判決・民集三六巻三号三二九頁、昭和五五年(オ)第七九二号
同五七年三月一八日第一小法廷判決・裁判集民事一三五号四〇五頁)で
あるところ、この理は、刑事事件において、上告審で確定した有罪判決が
再審で取り消され、無罪判決が確定した場合においても異ならないと
解するのが相当である。
(中略)
刑事事件において、無罪の判決が確定したというだけで直ちに検察官の
公訴の提起及び追行が国家賠償法一条一項の規定にいう違法な行為と
なるものではなく、公訴の提起及び追行時の検察官の心証は、その性質上、
判決時における裁判官の心証と異なり、右提起及び追行時における各種の
証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑が
あれば足りるものと解するのが当裁判所の判例裁昭和四九年(オ)第四一九号
同五三年一〇月二〇日第二小法廷判決・民集三二巻七号一三六七頁)で
あるところ、この理は、上告審で確定した有罪判決が再審で取り消され、
無罪判決が確定した場合においても異ならないと解するのが相当である。