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【社説】2005年08月31日(水曜日)付
URLリンク(www.asahi.com)
虚偽報道 朝日新聞が問われている
(略
しかし、この信じられないような出来事は、1人の若い記者に魔がさしたといって済むことではない。
記者をそんな心理にさせたものは何だったのか。取材をチェックする仕組みをどうつくるか。
問われているのは、そうしたことを含めた朝日新聞の組織や体質だと思う。
朝日新聞では89年に、写真部員が沖縄・西表島で自ら傷をつけたサンゴを撮影した。写真部員と本社は
法律違反の疑いで書類送検され、社長は辞任した。
このサンゴ事件で朝日新聞は出直しを誓う一方、紙面審議会を設け、紙面や取材の仕方について識者の
意見を聞くことにした。読者や取材先の声に広く耳を傾けるため、読者広報室もつくった。
しかし、5年前には広島支局(現、総局)の記者が中国新聞の記事を盗用するという事件が起きた。
当時の大阪本社編集局長は職を解かれた後、全国の地方取材網を回り、現場取材の重視などの再発防止策を
まとめた。
それからいくらもたたないうちに、今回の虚偽取材メモである。
最近では、取材録音を第三者に渡した不祥事、週刊朝日への武富士からの5千万円の資金提供、NHK幹部らを
取材した社内資料の流出問題なども重なった。
これらの問題は一つひとつ性格も原因も違う。しかし、こうも続いて起こると、何か構造的な問題があるのではないか
と感じざるをえない。
このくらいならという気のゆるみやおごり。社内外での競争がもたらす重圧や焦り。朝日新聞という伝統と看板が
かえって組織の病を生んではいないか。
こうしたことにきちんと目を向けて、病弊を根本から取り除く。日々の取材や紙面づくりで地道に努力する。
それしか読者の信頼を取り戻す道はない。
あらためて、そう誓いたい。