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★風人録:もはや落書きではない /群馬
今週は安中市にいる。で、怒っている。「めがね橋(碓氷第三橋梁(きょうりょう))」の落書きを
見てしまったのだ。教育委員会が立てた「文化財が泣いています」という看板が悲しい。やった
ヤツに聞いてみたい。ここに来た日付と名前と相合い傘マークを書いてうれしいのか。
恥さらしてるだけじゃないのか。「JUNPEI」なんて、うちの新人記者の名前もあった。
だいじょうぶか、あいつは!
近代化遺産としては全国第1号の国重文指定を受けた。そんなことを知らなくても、この
美しいレンガづくりの前に立てば自然に頭が下がる。1892年完成というから、115年も前に、
203万個のレンガを積み上げる気の遠くなる作業を明治の人たちはやったのだ。
実は10年前、私はここに来ている。97年9月、JR信越線横川-軽井沢間が廃線になった際、
連載を書いた。この線路を愛し、慈しんだ多くの人から話を聞いた。そんな自分のちっぽけな
記憶も引き裂かれた気持ちになっている。
指先で触ると、レンガは冷たかった。恐るおそるつめを立てると、つめは削れた。硬いのだ。
落書きではない。くぎか何かで彫ったはずだ。時間をかけて。堂々と。歴史になど無関心で、
自分の生きている一瞬の日付を刻むバカ。
悔しくて、県立前橋工業高校の村田敬一校長に電話をした。「群馬の近代化遺産 颯爽(さっそう)
たる上州」の執筆者の一人だ。心ないヤツらに対する不満をぶちまけると、群馬の建築物を知り
尽くした工学博士は言った。「どうもありがとう、そんなに思ってもらって」。心が少し和んだ。
【支局長・滝野隆浩】
毎日新聞 2007年1月21日
URLリンク(www.mainichi-msn.co.jp)
碓氷第三橋梁(Wikipedia)
URLリンク(ja.wikipedia.org)