07/09/06 18:03:36 BE:348660083-PLT(24679)
ワイン漫画の原作をやっていると、「ワインを飲むことが仕事なんて羨ましい」とよく言われる。
確かに我々姉弟にとってワインはそもそも共通の趣味であったし、楽しんで仕事をしている
面もなくはない。
URLリンク(www.asahi.com)
▲(C)亜樹直 オキモト・シュウ/講談社「神の雫」第4巻(週刊モーニング連載中)
が、そんな我々も「もう飲みたくない」と本気で思うことがある。例えば「フランス対イタリア
ワイン対決」の時の、安ワイン探し。
単行本4巻に収録されている「フランスVSイタリアワイン対決」は、主人公・神崎雫と“イタリア
の怪人”本間長介が、それぞれ一押しのワインを3本ずつ持ち寄って、伊・仏ワインのどちらが
優れているかを競い合うというストーリーである。この一編は本間長介、ことイタリア長介の
キャラクターを定着させるための大事な局面でもあったため、登場させるワインも、読者の
注目度が高い3000円以下の価格帯に絞ることにした。
登場させるイタリアワインに関しては、1本は我々のお気に入り『ロッジョ・デル・フィラーレ』で
行こうと決めていた。それ以外は、本間長介のモデルで実在のソムリエ・本間敦氏の協力を
得て、美味しい安イタリアワインを見つけることができた。
フランスワインも3000円台、2000円台はすんなり決まった。ところが、読者を納得させられ
るほど美味い1000円台のフランスワインが、なかなか見つからなかったのである。
3000円台がボルドー、2000円台がブルゴーニュなので、1000円台はローヌ・ワインに
したいところだ。我々はネットのワインショップで1000円台のローヌ・ワインを買いまくった。
宅急便のドライバーがワインを4~6本詰めた大きな箱を持って、毎日毎日、玄関先に現れる。
もちろん中身はすべて1000円ワイン。全部飲んでいたら肝臓が持たないので、試飲だけして
吐き出す。残念ながらほとんどが低レベルのワインなので、一口で試飲は終わり。
残ったワインは、最初は料理酒に使っていたが、そのうち台所でもワインが余りだし、とうとう
排水口に捨てるようになった。ああ、もったいない……。
本当に、あの安ワイン探しのことを思い出すと、今でもため息が出る。安ワインのボトルが
仕事部屋の床にずらーっと並んでいるのを見て、「ワインも趣味から仕事になると、飲むのが
辛いこともあるよね……」と、弟とボソボソ愚痴を言い合った。そしてかつてはテーブルワイン
の産地だったローヌ地方で、安くて美味いワインを探すのがいかに難儀か、つくづく思い知った。
だから、サン・コムの『コート・デュローヌ・レ・ドゥ・アルビオン』という素晴らしい安ワインに出会
った時は「ヤッター、とうとう決まり!」と、子どものように大喜びしてしまった。
そして、もうひとつの苦い思い出は、漫画の本編にオマケでつけているコラムで『B級マリアージュ』
という企画をやった時である。これはB級グルメ、つまりコンビニ弁当や缶詰のようなお手軽食品
と安ワインをマリアージュさせるのがテーマで、科学の実験のようにいろいろな安い食材と安ワイン
を組み合わせてみた。
しかし「見事にピッタリ」というよりは「不味くてビックリ」の組み合わせが圧倒的多数なのである。
中でも忘れられないのが、納豆とワイン、そして安いイカのサシミを安ワインと合わせた時。
マリアージュとはほど遠い相性の悪さに、吐き気すら覚えた。そして毎週こんな実験をやったら
身が持たないと悟ったため、B級マリアージュは大好評だったにもかかわらず、わずか半年余りで
一方的に連載を終了させてしまった……。
かくのごとく、我々も常にワインを楽しんでいるわけではないのだ。
時には苦しみ、時には泣き、身体を張って(?)ワインの奥深い世界を探り続けているのである。
asahi.com
URLリンク(www.asahi.com)
依頼
スレリンク(moeplus板:271番)