07/01/16 01:23:48
TYPE-MOONはいわゆる出版社ではなく、小さなゲーム制作会社。しかも4年前までは、単なる同好会だっ
た。ゲーム開発用フリーソフトの登場やCD-ROMプレスの低価格化とともに、個人や同好会でパソコンゲ
ームを作り、それをパッケージソフト化することが容易になってきた。そうした背景もあって、ゲームを作る
アマチュアサークルが急増している。更なる要因を加えるとするなら、それはまさにTYPE-MOONに代表さ
れるスターサークルの出現だ。
TYPE-MOONが制作した伝奇ビジュアルノベル・ゲーム『月姫』は、コミックマーケットなどの同人誌即売会
で尋常ではないヒットの仕方をし、テレビアニメ化までされるという、同好会の作品としては前代未聞の革命
を引き起こした。会社化したTYPE-MOONは、続いて発表したゲーム『フェイト/ステイナイト』を一般商業流
通に載せ、古参のメーカーを圧して2年連続で同ジャンルのPCゲーム販売数ナンバーワンを記録している。
この作品もやはり、テレビアニメになった。その快進撃は、それ自体が同人誌即売会から生まれた最も大き
なサクセスストーリーのひとつを紡いでいる。
虚淵玄『フェイト/ゼロ Vol.1「第四次聖杯戦争秘話」』は、『フェイト/ステイナイト』の前史を描いた伝奇活
劇小説である。興味深いのはこの小説が、出版社や取次を経由せずに同人誌即売会や漫画専門店、通販
などを通して販売されているということである。
TYPE-MOONにその気があれば、大手出版社を使って一般書店で売ることも造作なくできたことだろう。しか
し、双方の販売チャンネルを知る彼らは、里帰りをするかのように同人誌系の流通を選んだ。ネットやそれ
による通販網の整備によって、全国の書店に配本されずとも、既に必要十分に読者に届くようになっている。
加えて出版社や取次に中間マージンが取られない分、皮肉なことに、商業流通よりも同人誌系のチャンネ
ルで売った方が、同じ部数を出してもよほど実入りが大きい。ネットの普及とともに旧態依然とした商業構造
がバイパスされ始めることは昔から評論家らによって予測されてきたが、この本はそんな新しさを声高に主
張したり自己目的化したりすることなく、ドライにそれを実践してしまっている。
(続き、関連スレは>>2-5辺り)