07/08/26 17:45:05
発信箱:理科離し=元村有希子
この国は科学技術で生きていく、だから子どもの理科離れを何とかしようと
国は旗を振る。その一方で小学校の理科の授業時間数は、25年間で約4割減った。
子どもは実験や観察が大好きだが、「ゆとり教育」で真っ先に削られた。
学ぶ環境も豊かではない。実験・観察に必要な器具を、公立小学校がどの程度
そろえているか、文部科学省が04年に調べたところ、基準に対する充足率は
23%だった。例えば光学顕微鏡はクラス全員が「1人1台」で観察できる41台あるのが
望ましいと基準は定める。しかし実際には平均12台しかなかった。
不思議なことに、この基準を決めたのも、買う金を出し渋っているのも国なのである。
基準は「理科教育振興法」に基づいて国が定める。学習指導要領を実行できる機器を
学校が買えるよう、国は支援する義務がある。ところが、10年前には35億円あった
国の補助金が、今年度は13億円まで減った。
背景にあるのは「三位一体の改革」だ。国が補助金を減らしたら、地方自治体は
顕微鏡より福祉や介護に金を回した。現状はもはや、理科離れというより行政による
「理科離し」である。
ここまで形骸(けいがい)化した基準自体、適切なのか。現場の意見はさまざまだ。
「機器がないからいい授業ができない」という声に交じって「創意工夫すれば、
機器がなくてもいい実験はできる」という教師もいる。
別の調査では小学校教師の6割が「理科が苦手」と答えた。これでは創意工夫にも
限界がある。「理科離し」に付き合わされる子どもが気の毒になる。(科学環境部)
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