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■食料価格影響なし
世界各地に自生している毒性の強い植物「ナンヨウアブラギリ」の種子を原料とする
バイオディーゼル燃料(BDF)が急速に普及する見通しとなった。栽培が容易なうえ、
食料価格に悪影響を与えない利点があり、日本企業や欧州のメジャー(国際石油資本)
が相次いで大規模な栽培・精製事業に乗り出す。現在主流となっている大豆やヤシ
などの食用油からBDF原料の主役の座を奪う勢いだ。
メジャー世界2位の英BPはこのほど、英バイオ燃料会社、D1オイルズとの
折半出資で新会社を設立し、世界各地でナンヨウアブラギリを栽培すると発表した。
新会社は5年間に1億6000万ドル(約195億円)を投資。東南アジア、アフリカ、
中南米、インドで4年間に100万ヘクタールに作付けし、200万トン以上の原料油を
生産する計画だ。すでにBPは昨年からインドのエネルギー資源研究所(TERI)と
共同で試験栽培を実施。D1オイルズも約17万ヘクタールで栽培しているほか、
BDF生産に適した栽培技術を保有している。
英公共放送BBC(電子版)によると、D1オイルズのオクスボロー最高経営責任者
(CEO)は、2年以内に欧州でディーゼル車向けに実用化できるとの見通しを示した。
一方、使用済み食用油を原料にディーゼル燃料を再生している日本のびわこバイオラボ
(滋賀県高島市)もマレーシアの企業と提携し、年内にカンボジアでナンヨウアブラギリの
栽培、BDF精製事業に着手する。生産したBDFは現地の小規模発電所や欧州向けに
輸出する計画だ。2010年に3万4000キロリットル、将来は170万キロリットル以上の
BDF生産を目指している。
ナンヨウアブラギリを原料とするBDFは、アジア各国でも生産が急増する見通しだ。
インドネシア紙、ジャカルタ・ポストによると同国では太平洋戦争中、旧日本軍が
戦車や航空機の代替燃料を生産する目的で栽培を奨励し、灯油原料などに使われて
いたが、昨年初めに原油価格上昇に対応して商業化を目指す大統領令が出された。
BBCによると、インドでは6300万ヘクタールの荒れ地の半分でナンヨウアブラギリが
栽培できるとみられており、インド政府はすでに1100万ヘクタールを栽培地として確保。
ナンヨウアブラギリを中心に6年後に1300万トンのBDFを生産する計画だ。
農林水産省の調査によると、05年時点のBDF生産量は、ディーゼル車の
普及している欧州で362万キロリットル、米国で28万キロリットルにとどまっていた。
びわこバイオラボの新名謙多郎取締役は「日本国内では使用済み食用油が
BDF原料の主流となっているが、ナンヨウアブラギリを利用することで将来は質、
量の両面で安定的なBDF供給が可能になる」と話している。(佐藤健二)
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【用語解説】ナンヨウアブラギリ
学名はジャトロファ・クルカス。熱帯アメリカ原産のトウダイグサ科の落葉低木で、
高さは5メートル前後。干魃(かんばつ)や害虫に強く、やせたり乾燥した土地でも
栽培できる。3~4・5センチの果実に含まれる種子は約50%が油だが、4粒で
致死量となるほど毒性が強い。せっけんや解熱剤、ロウソクなどの原料に使われる。
16世紀にポルトガルの開拓者によりユーラシア大陸などに広まり、熱帯地域を中心に
世界各地で自生している。
TITLE:FujiSankei Business i.
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