07/07/06 02:53:32 A+GUrfJp0
(>>271の続きです。)
私はこの拘置所の中で聞いた、この在日朝鮮人で殺人鬼と呼ばれた男を訪ねて見ることにした。
彼の名前は除才喜と言い、私が訪ねた時は、長期間に渡る拘禁生活の中で体を壊し寝ていた。
私は何度か彼の家を訪ねて、ことの経過を聞いた。彼は在日朝鮮人として生まれ、なぜ、自分は在日として生まれたか、その自らの人生に真摯に向き合うことが出来ずに、若い頃から非行に走ってしまった。
そして20歳代の前半に強盗殺人を犯して無期懲役の判決を受けた。強盗殺人という罪名から殺人鬼などと呼ばれたものであるが、まじめに努め仮出所をもらって社会に復帰した。
日本人と結婚し小さな食堂を開いた。
その食堂の近くに小学校の校長までした女性が一人住んでいたが、その家が強盗に襲われ殺された。警察は強盗殺人の前科がある彼を先ず疑い出した。
近所の聞き込み、尾行…自分が疑われていることは、すぐに分かったそうである。次第にお店にお客が来なくなり、噂が広がって出前の注文も途絶えてしまう。
日々の生活にも困窮した彼は、「車でローン貸付」というビラを見つけ、その会社からお金を少し借りた。5万円ほどだったと思います。それから数日後、自宅と店にがさ入れが行われ彼は逮捕された。
容疑はまだクレジット代金が残っている車を担保に金を借りた詐欺容疑であった。毎月のクレジット代金が終了しなければ、確かに名義は本人のものではない。
しかし、乗っている車は多くの人は自分のものであると思っており、このような車金融はほとんどが残金が残っていても貸してくれるものである。しかし、それが詐欺事件となってしまった。
これは明らかに別件逮捕であり、本筋は強盗殺人であった。連日強盗事件を調べられ、嘘発見機にかけられ、強引な取調べを受けた。彼はそのことを克明に覚えていた。
私は裁判資料、彼の記憶と証言、奥さんの苦悩の日々を綴った日記などをまとめ、数ヶ月かけて本を書き上げた。
勿論、自らの体験もあるので、取調べ、代用監獄、拘置所、裁判所など基礎知識は十分だった。
彼の場合、最終的には詐欺罪で起訴された。しかし、彼の場合有罪となれば仮出所は取り消され、一生刑務所から出れなくなる可能性は大だったのである。
(続きます)