07/11/08 12:16:08
マスコミが書かない「イラク情勢の好転」
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イラク情勢が好転してきた」「イラクでテロが減り、治安が改善されてきた」―。
こうした記述だけでも奇異に思う読者がいることだろう。それほど米国によるイラクの治安回復と
民主化の作業は「もう成功の見込みなし」という審判が確定していた。「イラクは内戦が激化し、
民主化は絶望的」というのが大多数の見方でもあった。とくに日本国内でその傾向が顕著だった。
だからこそ、イラクの治安が目にみえてよくなったという情報は、なかなか日本側では広まらないのだろう。
日本の大手マスコミを見回しても、イラク情勢が米国や現イラク政府にとって、よい方向へと
改善されたことを正面から報道したのは日本経済新聞11月2日付朝刊国際面の「イラク 民間人
死傷者、減少続く」という見出しの記事など、ごく少数である。この記事は「10月今年最少 米掃討や
民兵停戦奏功」という副見出しもついていた。
今のイラクの治安状況が好転してきたことは、どうみても事実である。この事実の認識と米国の
対イラク政策への批判とを混合させてはならないだろう。米国の政策やイラク政府の政策をどのように
非難するにせよ、現地の情勢の客観的な把握がまず前提となろう。
「情勢が好転するはずがない」という思いこみから、現実の情勢の好転を見ようとしないのでは、
砂に頭を突っ込んだダチョウの愚につながりかねない。そんなことを考えながら、今ワシントンで
急速に広がっているイラク情勢への新しい認識について報告することとした。
■数字が示す治安の好転
イラクのテロが減り、死傷者が減り、治安が回復されてきたという公式報告が米国で初めて大きく
伝えられたのは、実は今年9月10日、ワシントンの連邦議会での当事者たちの証言で、だった。
同日の下院公聴会でイラク駐留多国籍軍司令官のデービッド・ペトレイアス将軍とイラク駐在の
ライアン・クロッカー米国大使の2人が証言した。ペトレイアス司令官はブッシュ大統領が
2007年1月から着手したイラクへの米軍3万増派の新作戦が成果を上げたと報告した。
具体的には次のような内容だった。
・昨年12月から今年9月までにイラク民間人のテロや戦闘による死亡が全土で45%、
バグダッドで70%も減った。
・同期間、部族・宗派対立の結果としてのイラク人の死が全土で55%、バグダットで80%減った。
・これまでテロの最も激しかったイラク領内西部のアンバル県で自爆テロや車爆弾の仕掛けが
今年3月までは毎月平均175件もあったのが、8月には90件にまで減った。
・今年のはじめから8月末までに米軍・イラク国軍はイラク国内のアルカイダの主要拠点5カ所を
破壊し、イラク人の最高幹部を逮捕し、幹部100人近く、構成員2500人以上を殺傷あるいは拘束した。
以上のような「戦果」が米軍の司令官によって報告されていたのだった。
さてそれから2カ月、このイラク情勢の好転のトレンドはさらに続いていることが種々の報告で明らかに
された。まず米国議会の会計検査局(GAO)が10月末に発表した報告書がイラクでのテロ攻撃全体の
減少を伝えていた。GAOはこれまでイラクの軍事情勢についてたびたびブッシュ政権の作戦の失態を
伝え、議会に批判の材料を期せずして提供してきた調査機関である。
同報告書の中心部分は以下のとおりである。
・イラク全土での米軍、イラク国軍、一般イラク民間人らに対する「敵による攻撃」は
今年6月には1カ月約5300件だったのが今年9月には同3000件に減少した。
11月1日には米国防総省からの同様のテロ減少を示す数字が発表された。
・今年10月のイラクでの米軍の戦死者は合計39人で、昨年3月以来の最少を記録した。
米軍の戦死者は今年の1月から9月までの合計は803人で、1カ月平均89人強だった。
その平均が10月には一気に半分以下の39人となったのだ。
・イラクの民間人の死者は今年10月には約800人となった。今年1月には約2800人だったから
大幅な減少となった。
・イラク全土で爆発物の爆発あるいは発見は今年7月には99件だったのが同10月には53件に減った。
>>2に続く