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毎日新聞 2007年1月27日 東京朝刊
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イラン・湾岸アラブ諸国:「ペルシャ湾」か、「アラビア湾」か 呼称めぐり攻防
「ペルシャ湾」か「アラビア湾」か--。
イランとアラビア半島に囲まれた海域の呼称を巡り、イランと湾岸アラブ諸国の攻防が続いている。
以前から地図上の表記論争はあったが、アラブ側は最近、貿易やメディアの分野でも攻勢を強めており、
イランは防戦に懸命だ。
◇貿易停止にも発展
イラン学生通信によると、アラブ首長国連邦やバーレーンなどの一部企業が昨年末、
イラン側との貿易を停止した。アラブ企業が商品の荷札や取引書類の記載を
「アラビア湾」に改めるよう求め、これをイラン側が拒んだためとみられる。
イラン政府は「アラビア湾」の記載がある商品の輸入禁止を検討する委員会を設立、対抗の構えだ。
カタールの衛星テレビ・アルジャジーラが折に触れ「アラビア湾」と報じるなど、
アラブ・メディアも加勢し、アラブに対して優越感の強いイランの感情を逆なでしている。
同海域の呼称は、地理学の国際的権威「ナショナル・ジオグラフィック協会」(本部ワシントン)が
04年発行の世界地図で、従来の「ペルシャ湾」に「アラビア湾」をカッコ付きで併記したことから、
イラン国内で大きな問題になった。イラン外務省は同協会に「アラビア湾」の表記削除を求める一方、
「ペルシャ湾」の正当性を訴えるため、古い地図や文献を証拠として示す特別展を開催した。
テヘラン市議会はテヘランと新国際空港を結ぶ高速道路を「ペルシャ湾高速道」と名付け、
国民の間では「ペルシャ湾」の呼称を擁護、推進するインターネット上の署名運動も起きた。
イラン最大の地図会社「ギタシェナシ」のバクティヤリ社長(55)は
「紀元前5世紀にギリシャの歴史家ヘロドトスは自著『歴史』の中でペルシャ湾と表記した。
歴史的にアラブ人学者も『ペルシャ湾』と書いており、『アラビア湾』は近年の政治用語だ」
と言い切る。結局、ナショナル・ジオグラフィック協会は改訂で
「ペルシャ湾」を国際的に認知する形で呼称併記を取りやめた。
最近のアラブ側の攻勢について、イランの保守系ジャーナリストは「イラクやレバノン情勢などを巡る
(イスラム教シーア派国家の)イランと親米アラブ諸国の対立が反映しているのではないか」と推測する。
イラン外務省のホセイニ報道官は21日の記者会見で「『ペルシャ湾』と呼んでもらうよう全力を
尽くしている」と述べた。だが、先のジャーナリストは「イラン政権は強く出られない。
(改称を先導する)ドバイ(アラブ首長国連邦)にはイランから膨大な投資資金が流れ込んでおり、
金融封鎖などの措置を恐れているからだ」と分析する。