07/11/18 05:33:14
中国・江蘇省昆山(こんざん)市淀山湖鎮(てんざんこちん)に進出している洋服メーカー「冨田(とみだ)」
(愛知県一宮市)が、地元政府ぐるみの企業乗っ取りで業務を妨害されているとして、中央政府の商務省
に救済を求める異例の直訴を行った。
同社の冨田博社長(63)は同市政府認定の「名誉市民」だが、「一部の役人が私利に走り、称号も役に
立たない」とお手上げの状態。政治腐敗が外資のチャイナリスクとして表面化した形だ。
「冨田」は1992年、昆山市にある国営企業と合弁でスーツなどを生産する縫製工場を設立、99年に同社
と中国の関連会社が全株を買い取った。昨年の年商は8000万元(約12億8000万円)で、従業員は
約650人。
同社によると、当初の合弁先から派遣されていた社長の中国人男性(43)が2004年末、健康上の理由で
退職。その後、弁護士や監査事務所の調査で、土地の買収資金などの名目で支出された約5300万元
(8億4800万円)を横領していた疑いが発覚した。
さらに男性は、工場用地の名義を自分の経営する「新東湖服装公司」に無断で変えていたほか、市政府側
との間で工場所有者を同公司とする契約書まで作成していたこともわかった。
冨田側が同市公安局に通報したところ、逆に男性側は昨年4月から9月にかけ、工場の出入り口にコンク
リートの壁や鉄柵を設けて営業を妨害。同社は近隣の蘇州市検察当局に相談したが、「地元の抵抗で捜査
ができない」との返答だった。
冨田は昆山市対外経済貿易委員会に対し、来月17日に迫った合弁期限の延長を申請しているが、これも
棚上げされたまま。日系企業が約400社進出し、外資誘致に積極的な同市としては異例の対応で、在上海
日本総領事館も市関係部門に善処するよう申し入れた。
市や鎮の政府幹部の一部は調査をしないまま、「資金を保管しているだけで横領にはあたらない」と男性側に
お墨付きを与える文書を捜査当局に提出している。
こうした経緯からみて、一連の不正には政府関係者も関与している可能性が高いといい、同社は商務省に対し、
「背景には土地などの公共財産を流用しようとする官民の癒着がある」と訴えている。
男性と同委員会は読売新聞に対し、「取材には応じない」としている。
冨田は明治初期創業の老舗。88年以来、遼寧省大連、瀋陽や上海に延べ10の合弁会社を設立して洋服を
生産し、日本や欧州の量販店、大手スーパーなどに卸している。瀋陽でも名誉市民の表彰を受けている冨田
社長は、「長く中国とかかわってきたが、こんなことは初めて。せっかく育てた工場なので、何としても操業を
続けたい」と話している。
ソース
読売新聞 URLリンク(www.yomiuri.co.jp)