07/11/16 02:56:04
田原総一郎の政財界「ここだけの話」第35回
北朝鮮問題で改めて問う 日本の国益と拉致と核
「サンデープロジェクト」の取材で北朝鮮に行った。小泉純一郎首相(当時)が二度目の訪朝をした後に、僕も
拉致問題の取材でピョンヤンへ行っているので、今回が二度目の北朝鮮訪問となる。(以下、大幅に中略)
■六カ国協議で取り残される日本
なぜアメリカの態度が急に変わったかというと、ブッシュ大統領とライス国務長官がなんとか任期中に何かしらの
成果を残しておきたいと焦っているからだ。
ブッシュ政権は来年いっぱいで終わってしまうが、イラク戦争は泥沼化してしまい、何1つ成果を上げていない。
ブッシュ大統領とライス国務長官は、今から何か解決できる問題あるとすればそれは北朝鮮だと、大方向転換をした。
そして、それに中国、ロシア、韓国も追随して、拉致問題を抱えた日本だけが取り残されている状況になっている。
僕は、拉致をいい加減にしろとは言っていない。ただ、向こうが再調査をすると言い出している、ということだ。
北朝鮮も少し変わってきているのだと思う。
小泉前首相が日朝国交正常化をしようとしていた時は、アメリカは全く関心がなかった。関心がないどころか、
「悪の枢軸」とまで言っていた。まずビン・ラディン、タリバンとの戦争があり、フセイン・元大統領率いるイラクと
戦争をやるために、イラク・イラン、そして北朝鮮を「悪の枢軸」とした。
アメリカから全く相手にされず、敵視されていた3年前は、北朝鮮は自信がなかった。日朝国交正常化は、おそらく
北朝鮮から日本に提案してきたのだと思う。
国交正常化というのは、結果的に「カネ」だ。日本は韓国と国交正常化する時に5億ドル出している。その時から
通貨の価値が変わっているので、今北朝鮮と国交正常化をすれば日本はその10倍の50億、60億ドル、つまり、
7000億円くらいを払うことになる。これでもって経済を再建したいという思いが北朝鮮にはあったはずだ。
■拉致問題をどう考えるか
アメリカが北朝鮮に対する敵対政策を止めて、近づいたことで、北朝鮮は自信を持つようになってきた。
自信を持って、有利にはなってきたのだけれども、やはり日本のカネには期待している。自信を持ち始めた
北朝鮮は、日本との交渉に対する態度も変わってきており、3年前とは違う意味で前向きになっていると思う。
交渉としては、日本は3年前の方が有利な立場にあった。あれを突っぱねてしまったというのは日本の国内政治の
問題だった。もしアメリカが先に北朝鮮との国交正常化を実現したら、これは大変な問題だ。アメリカは日本に金を
出してやれと言うだろう。
レアメタルは、コンピュータを作るのにも何をするにも必要なもので、北朝鮮にしかない。だから多くの白人が
北朝鮮に集まってきている。ここに大きなビジネスチャンスがある。北朝鮮が各国との貿易をますます盛んに
行うようになれば、日本の経済援助の相対的な価値は下がる。
日本も、政治は政治、拉致は拉致、しかし、ビジネスはビジネス、というようにやるべきだ。EUやアメリカはすでに
そうしている。
現在、164カ国が北朝鮮との国交正常化を実現しており、残っているのは20数カ国だけだ。日本から見ると北朝鮮が
孤立しているように見えるが、実は全然孤立などしていない。国交正常化していない国の方が孤立しているのだ。
日本はもっと危機感を持つべきだ。これで、アメリカが国交正常化を実現すれば、日本は世界の大勢から取り残されて
しまうことになるのだ。
田原 総一朗(たはら・そういちろう)
(Nikkei BPnet 2007年11月15日)※元記事はとても長いです
URLリンク(www.nikkeibp.co.jp)