07/09/18 23:03:40
■[中国と私] 鉄道の旅で印象がらり ~ 俳優 関口知宏さん
旅の前後でこれほど印象が変わった国はない。
今年4月から約2ヵ月間、NHK番組「関口知宏の中国鉄道大紀行」の企画で初めて中国を旅した。
西部の都市ラサから西安までの約1万7千㌔を列車で移動し、十数ヵ所の都市を訪れた。
意外だったのは、地元の人たちからの熱烈な歓迎だった。「卵を投げつけられたらどうしよう、なん
て本気で心配していた」
番組クルーがカメラを向けてもいやがらず、「どうぞ、どうぞ。入っていきなよ」と自宅を案内するおば
ちゃん。「よく来たねえ。でも昔みたいに銃剣持って悪さをしたら堪忍しないよ」。ウインクしながら
冗談を言うおばあさん……。「反日感情」について抱いていた先入観は、行く先々でどんどん崩れた。
中国で深刻化しているという環境破壊についても、見届けてやろうと思った。南部の昆明で見た湖
は確かに濁っていた。人口増加に伴う生活廃水の流入が原因だった。地元の人たちは「日本の九
州できれいになったところがあるそうじゃないか。どうやるんだい? 知恵を貸しておくれよ」と熱心に
聞いてきた。
たいていの街で夜が暗いことにも驚いた。省エネのために電気を消しているという。上海や杭州の
ような大都市でさえ同じだ。
一方で、中国製品や食品の安全性もまた現実だ。「中国の勝手ぶりがどこにあるのか、わからなく
なってきた」。一方的なイメージを作り上げるのは危ないと痛感した。旅は9月、再開された。今度
は約2ヵ月半をかけて西安からカシュガルまで約1万9千㌔を列車で移動する。「あとどれだけ未知
の中国を見つけられるか」。胸が高鳴る。 (文・関根和弘)
▽ソース:朝日新聞 2007年9月18日付 13面