07/09/17 10:26:56
次期米大統領選での政権奪回に向け勢いづく民主党の候補指名争いに、
謎の香港系実業家ノーマン・スー被告の献金疑惑が暗い影を落とし始めた。
詐欺などで得た「汚れたカネ」を、ヒラリー・クリントン上院議員ら党内有力者に幅広く献金していたとの疑惑は、
選挙戦を揺るがす一大スキャンダルに発展する可能性を秘めている。
▽アキレス腱(けん)
「返金以外の選択肢を取るのは極めて困難だった」。
クリントン氏は10日、85万ドル(約9800万円)に上る巨額の政治献金返還を発表した。
スー被告が集金に関与した260人分の献金だった。
選対本部は大口献金者の1人でもあったスー被告の犯罪歴を「まったく知らなかった」と弁明した。
女性初の米大統領を目指すクリントン氏は支持率で首位を独走中。
しかし武器である豊富な資金力が、逆にスキャンダルにつながるアキレス腱(けん)にもなりかねないと
以前から指摘されていた。
クリントン氏は献金の返還と同時に、大口献金者の身元調査を徹底する再発防止策を表明したが、
スー被告との関係については不透明な部分も残され、疑惑を断ち切れたわけではない。
大統領在任中、同様に中国系米国人による献金疑惑を引きずった夫の教訓を生かせるかどうか、
正念場に立たされている。
▽黒幕
ウォールストリート・ジャーナル紙の調査報道によると、スー被告は香港生まれの56歳。
米カリフォルニア大バークリー校で情報工学を学んだ後、
米国で不動産業やアパレル業などを手掛け、成功と破産を繰り返した。
羽振りのいい時のスー被告を知る人は「気さくで社交的、ユーモアもあった」と魅力を語る。
1990年には「典型的なねずみ講の手口」で金を集めたとして詐欺罪で訴追され、
量刑言い渡しの前に香港に脱出。しかし香港でも98年に破産宣告され、米国に戻った。
その後、巨額の政治資金を供給する「黒幕」として民主党に深く食い込み、
2004年以降、複数の党有力者への計数億円相当に上る献金に関与。
リストにはクリントン氏をはじめ、指名争いで同氏を追うオバマ上院議員、
前回大統領選の民主党候補ケリー上院議員らの名前がずらりと並ぶ。
▽謎の動機
大きな謎は、スー被告が政界にかかわったきっかけと動機だ。
資金については、詐欺で得た収入を充てていた可能性が指摘されている。
スー被告が第3者の献金を補填(ほてん)していた疑いもあり、
司法当局は選挙資金集めにも不正があったとみて調べている。
クリントン氏のあら探しに血眼になっている民主党の他候補も、
スー被告が党内にあまりに広範に献金していることなどから、批判の矛先は鈍りがちだ。
民主党全体のイメージ低下につながるとの懸念もあるようだ。
スー被告は8月31日、裁判所へ15年ぶりに出向き、保釈金を支払って収監を免れた。
ところが再出頭を命じられた9月5日に姿を見せず、
シカゴ行きの列車内で意識混濁に陥っているところを発見され、退院後に収監された。
遺書も知人に送っていたという。
今後、政界とのかかわりなどについての証言が「爆弾発言」になる可能性もある。
与党共和党側は民主党攻撃の構えをみせており、盛り上がる選挙戦の陰で疑惑は当面くすぶり続けそうだ。
(共同)
ソース 産経新聞
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