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ＹＯＵ館：光化学スモッグ 日中摩擦
今年、西日本を中心に光化学スモッグの観測が相次いでいる。原因の一つと
されるのが、急成長を続ける中国からの越境汚染。日本側の指摘に、
中国からは反論も聞こえてくる。【関東晋慈、船木敬太、北京・堀信一郎】
■晴れぬ疑惑
今年の光化学スモッグの特徴は、５月９日に新潟県と大分県で観測史上
初めて注意報が発令されるなど、これまでほとんど影響のなかった地域にまで
被害が拡大していることだ。さらに同日は、栃木から熊本まで計２２都府県で
注意報が発令されるという、ほとんど前例のない広範囲にわたった。５月の
注意報発令の延べ日数は平均約１５日だが、今年は４０日を超えた。
国立環境研究所の大原利真・広域大気モデリング研究室長は「九州の
離島など、これまで観測されたことがない地域で高い濃度が観測されている」
と驚く。５月６日から９日にかけての東アジア地域上空の汚染物質の移動状況を
シミュレーションした結果から「９日に各地で発生した光化学スモッグは、
中国を中心とした大陸からの越境汚染が原因。アジア全体で早い時期に
対策をとる必要がある」と警告する。欧州では既に国境を超えて汚染物質の
対策に取り組む「長距離越境大気汚染条約」を締結している。
この状況を受けて、福岡県の麻生渡知事は、１８日に麻生太郎外相と、
２１日には若林正俊環境相と会談。中国からの汚染大気流入問題の対策を
要請した。九州地方知事会も国に原因究明を要望した。
■環境省は慎重
環境省は２０日、専門家による検討会設置を決めた。。環境保全対策課は
「中国が原因と断定することはできず、強調することは好ましくない。（有害な）
光化学オキシダントは観測が難しく、日本がリードする技術を東アジア各国に
普及することが優先だ」と話す。若林環境相も「情報を的確に早め早めに
出していくことで、自衛、防衛の体制をとっていく」と述べており、外交的な
配慮を示す。
■中国紙が反論
一方、汚染源の一つとされる中国。北京では来年夏の五輪に向けて
建設ラッシュが続く。工場からの有害物質排出や乗用車の急増など、
環境悪化の要因は複合的で、環境保護局も「光化学煙霧（スモッグ）の
恐れがある」と警告する。しかし、実際に光化学スモッグの警報や注意報が
出た例はほとんどなく、北京市民の関心は薄い。このため、九州などで
光化学スモッグ注意報が発令され、「中国が原因」と指摘された際、
中国メディアは敏感に反応した。
上海紙は国家気象局研究員の「中国の環境汚染が原因という日本の指摘を
裏付けるデータはない」との反論を掲載。中国青年報も日本の国立環境研究所の
専門家が「日本には環境保護に関する制度を改善しなければならないところが
残っていると指摘した」と報道した。
だが、現実的には中国の大気汚染を否定できるものではなく、環境保護局は
「大気汚染によるがんと呼吸系統の病気が顕著に増えている」と認めている。
毎日新聞 URLﾘﾝｸ(www.mainichi-msn.co.jp)
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