07/06/15 01:14:09
奈良「正論」懇話会 渡辺利夫・拓殖大学長が講演
奈良市内で13日、第28回奈良「正論」懇話会が開かれ、拓殖大学の渡辺利夫学長が
「最近の東アジア情勢~日韓、日中関係を中心として」と題して講演した。要旨は次の通り。
常識的には昔のことは忘れていくので、日本に対する負のイメージも徐々に薄まっていくと
考えがちだが、現実は逆で、時間がたつほど強まっている。韓国や中国には、「反日」を構造化
しないと生きていけない何か特殊な事情があるのではないか。
反日感情が消えることを我々は期待しない方がいいというのが、最初に申し上げたい私の結論だ。
まず日韓関係でみると、韓国ではアイデンティティーを「血族共同体」に求める傾向が強い。
北朝鮮が核実験を強行したこの状況においても、南北間の融和的な傾向はますます深まっている。
これは、大陸側では中国やロシア、海側では日本などの勢力に取り囲まれてきたという地政学的な
宿命かもしれない。血族に対する自負は強く、それが家族や国家にまでつながっている。
それを外部の勢力が犯そうとすると、外部勢力に対する反感がナショナリズムとして高まる。
それはますます燃え上がっており、「反日」という背骨がないと、この国はすっくと立って
いられない国なのではないかとさえ思える。
一方、日中関係でみると、私は中国を1985年に初めて訪れた。現地で友人もたくさんでき、
学生とも交流を深めて、中国に対しては心温まる感情を抱いていた。
ところが1995年にも北京に滞在した際、中国に対する感情が大きく一変した。
この時期に反日運動が非常に激しく盛りあがり、報道もされた。中国では愛国主義教育が唱え
られたが、この場合の愛国主義とは「反日」を意味する。つまり中国は、抗日戦争に勝利したこと
をアイデンティティーとしている。
どうしてこれほど反日憎悪をかき立てるのか。
東西冷戦が終わり、旧ソ連も崩壊すると、中国政権は1990年代、どのように生き延びていく
のかが大きな政治課題になった。その末に考えついたのが反日カード。当時は政権基盤も弱く、
反日カードに頼らざるを得なかった事情もある。
その後、中国は外交で反日カードを持ち出し、倫理的にも優位に立つというスタイルが定着した。
反日感情が薄まるどころが日に日に強まっていることからも、これは意図的につくられたものだ。
中国の反日運動がなぜこれほど激しいのか。それが真に問われるテーマだ。
私の結論では、農村部から都市部にきた出稼ぎ者の不満が、もはや臨界点に達していることが
挙げられる。
中国の戸籍制度は身分制度に基づき、よほど特別な事情がない限り身分は変更できない。そのため
都市部に出稼ぎにきた農民は、建設労働などをしても社会保障がなく、子供も学校教育を受けることが
できない。こうした不満層に反日感情が深く根付いている。
温家宝首相が来日したが、本質的には何も変わっていない。変わったのは表情とパフォーマンス
だけ。それを誤解してしっぺ返しを食うのは日本だ。それを与党の政治家が笑顔で大拍手している
という姿は、どうみても異常だ。ガス田開発や国連常任理事国の問題にしても、何ひとつ事情は変化
していない。
政治的な要素以外でも、加熱する経済のリスクや急激な少子高齢化などの問題も抱えている。
こうした諸要素が解決されない限り、反日感情が薄らぐことはない。
ソース 産経新聞
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