07/06/04 01:17:45
脱北者が日本を目指すようになるのか。事実関係を詳しく調査した上で、政府としても的確に
対応する必要がある。
青森県・深浦港沖合で、不審な船が航行しているのを釣り人が見つけたのが発端だった。青森
県警が乗船していた男性3人と女性1人を保護したが、「生活が苦しくて北朝鮮を脱出してきた」と
話しているという。
北朝鮮当局から指示を受けた工作員などではなく、北朝鮮を脱出し、日本に入国を図った可能
性が高いようだ。船は全長わずか7メートルほどの木造船で、毒薬とみられる薬品を持っていた。
切羽詰まった行動に見受けられる。
政府は当面、4人を保護する。まずは人物の特定や脱北した理由、脱出のルート、目的地など
を慎重に調べなければ最終的な判断は難しい。
直接には入管難民法違反に当たり、強制送還するのが一般的だ。経済的困窮を理由に脱北し
た「経済難民」であれば、日本政府に保護義務はない。
だが、脱北者たちの証言によると、北朝鮮へ強制送還されると、多くは強制収容所に送られ、
命を失うこともある。
日本が昨年制定した北朝鮮人権法には「脱北者の保護、支援に関し、施策を講ずるよう努める」
という一項がある。法の趣旨を踏まえ、本人の意思を聞くなどして対処するのは当然のことだ。
脱北者は近年、急増し、韓国に今年2月までに入国した総数は推定で1万人を突破した。中国
では脱北者が日本人学校や日本の総領事館に逃げ込み、外交上の問題に発展したケースもあった。
しかし、日本海ルートで日本に来た例は、ズ・ダン号の事件があるだけだ。男性らは「新潟はどこ
か」と釣り人に尋ねたという。日本に受け入れ先があったのか。今後も多発する可能性はあるのか
。こうした点の調査も必要だ。
背景には、深刻な経済危機を招いた失政を棚に上げて、専制恐怖政治を続けている金正日支配
体制がある。
脱北者の問題は拉致事件と同様、北朝鮮による重大な人権侵害問題だ。
中国や韓国のほかに、タイなども脱北者問題に直面し、米国も北朝鮮人権法を制定し、これまで
に30人の脱北者を受け入れている。日本はこうした国々や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)
などと連携し、問題の解決を図っていく必要がある。
今回の事件では、北朝鮮が身柄の引き渡しを求めたり、日本の対応を非難したりするなど、筋違
いの脅しをかけてくることも予想される。そんな圧力に屈せず、毅然(きぜん)と対応していくことも
大事だ。
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