07/05/29 22:55:00
■国外移転も「パリパリ(早く早く)」気質
業界関係者の間では「費用節減には限界があり、結局は技術力で勝負するしかない」という意見も多い。
サムスン電子を支える半導体の場合は技術向上が利益につながるからだ。同じ設備を使ってより多く生産
するのも重要だが、次世代技術に早く転換することでより早く利益を出すのが競争力ともいえる。
サムスン電子もLG電子も韓国内では費用節減、賃金節減と厳しい。ただし、海外投資にはとても積極的だ。
サムスン電子は1万円以下の低価格の携帯端末製造のため、ベトナムに工場設立を検討していると発表した。
これで韓国では年間700人ほどの職がなくなる。中国とインド工場の増設を含めると2年後には 8000人ほどの
職が失われる。
サムスン電子は今年のR&D費用の4割を海外に振り向ける計画だ。しかし、だからといって「サムスンはひどい」
とは言えない。ライバルのモトローラやノキアが既にグローバル生産体制を築いているのに、サムスン電子には
愛国のため生産コストが高くても韓国にいてほしいとは言えないだろう。
韓国財政経済部の統計をみると、韓国企業の海外直接投資は毎年急増していて、2006年は前年比2倍と伸び
180億ドルを超えた。その25%が中国に投資され、中国を含むアジアへの投資は103億ドルで全体の56%を
占めている。北米は16.5%、ヨーロッパは15.6%だった。
海外投資に積極的なのは安い賃金と土地を求めてというのが一般的だが、実際には韓国の首都圏の不動産バブル、
工場を新設できない厳しすぎる土地利用規制、生産職労働組合との問題なども影響している。
当然だがその分、韓国内の製造業は穴が開いてしまっている。このままではコストの低い海外への移転が加速し、
雇用が減り収入が減り消費も減少し経済成長も鈍化する悪循環になってしまうのではないかと怖くなる。産業資源部
の調査によると、大手企業上位200社の 2007年の韓国国内投資は前年比6.8%増加の56兆4000億ウォンの見込みだが、
このまま海外投資が毎年2倍ずつ成長すれば2年後には金額が逆転する。
原価節減のために仕方ないとしても、そのペースが速すぎる。パリパリ(早く早く)の国民性らしく即断即決で工場が
海外に移転し、優秀な人材も職を求めて海外に移る。生産を海外に移して韓国内はよりハイレベルな産業のブレーン
になるはずが、どうも予想がずれてしまったような気がする。企業も政府もあれこれ思案はあるようだが、12月の大統領
選挙が終わってからでないと踏み切れないという雰囲気もある。
■「会社のカネで外遊」ブログで自慢
一連の緊縮経営の報道を見ていると、必死の覚悟で経営改善のためにがんばる会社もあれば、企業が社員の
恐怖心をあおることを狙って頻繁に「非常経営」「緊縮経営」を発表する会社もあることが分った。社員に愛社心を
強要しつつ、社員を減らし賃金を大幅削減するだけのリストラで満足するところも少なくなく顰蹙(ひんしゅく)を
かっている。
本当に企業が危ないなら、社員を苦しめる前に「会社の財産は自分の財産」と考える財閥オーナー一家の姿勢から
変えるべきではないだろうか。
物価は毎年10%以上値上がりしているのに、社員の賃金は2%も上がらない。なのにオーナー一家は名前だけ
役員に連ね、社員が一生働いても手にできない金額を年俸としてもらっていく。
しまいには「事業開発のためのヨーロッパ研修」と称して会社の金でホテル代だけで月数千万円を使い、それを自慢げに
ブログに書き込んだ財閥の娘もいる。持ち株会社の株を極端に安い値段で特定人物に集中的に売り、経営権を継承しよう
としたのがばれて裁判中の会社もある。韓国企業のグローバル化はますます進むだろうが、このような経営体質を抱え
続けて大きな落とし穴に落ちなければいいのだが。
[2007年5月29日]