07/05/27 23:43:38
【北京=福島香織】中国のニセ食品、汚染食品問題で、経済のグローバル化に伴い
食の危険が海外に飛び火する懸念のほか、格差拡大により中国下層社会の人々に
しわ寄せがゆく構造が顕著になってきた。中国当局は食の問題の啓発と
改善に本腰を入れ始めたが、効果はいっこうに上がっていない。
5月上旬、モンゴルのウランバートルで中国製即席ラーメンを食べた学生2人が
中毒死したと地元紙で報じられた。因果関係は証明されていないが、
そのラーメンが、俗に「下水溝油」と呼ばれる質の悪い油で作られた可能性が指摘された。
中国では、食品工場などの油を含んだ下水を再加工して作った「下水溝油」を利用した
偽即席ラーメンが本物そっくりのパッケージで格安で市場に出回り、ときどき農村で
食中毒事件が報道されてきた。今回の事件は問題が周辺途上国に
飛び火する危険性を示したと受け止められている。
牛乳には直接抗生物質
「中国では雑菌処理のために牛乳タンクに抗生物質を加えるケースもある」。
中国で酪農指導を行う酪農家はこう話した。病気治療のため抗生物質を
乳牛に投与したあとに絞った牛乳には抗生物質が残留するが、
そのまま売られることも日常的だという。牧草と徹底した衛生管理で飼育された乳牛もいるが、
こうした安全な牛乳と抗生物質が残留している「有抗乳」との値段の差は
実に6~7倍。中小の牛乳メーカーでは「有抗乳」が横行しているのが現実だ。
同じ問題はコメにもある。発がん性のあるカビがはえた古米は市場流通を禁止されているが、
出稼ぎ農民(民工)用の工場や建設現場の食堂に安く卸され、「民工米」と呼ばれている。
その一方で、今年から日本産米の輸入が解禁され、富裕層をターゲットにした
コシヒカリなど高級米が高級スーパーに並ぶことになる。
最近の新華社系時事週刊誌「瞭望」の特集記事によれば、食品工場45万のうち、
35万が従業員10人以下の小規模工場で、22万が食品製造に必要な衛生許可証などを
備えていない零細工場という。中国政府は最近、食の安全の啓発に力を入れ、
都市部の富裕層の間では有機農法ブームが起きている。しかし、食品製造の現場を
支える労働者や農民の啓蒙や、貧困層の食の安全はほとんど顧みられていないのが現状だ。
(2007/05/27 22:41)産経新聞
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