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■急成長中国の裏には…環境、心の荒廃 弊害も山積み
FujiSankei Business i. 2007/5/16
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中国政府の最新統計によると、改革・開放路線が始まった1978年から昨年まで29年間の年間平均の
経済成長率が9・67%に達した。同時期の世界全体の数字は3・3%だから、中国は世界経済のほぼ3倍の
急成長を続けている。日本の高度成長期(56~73年度)の年間平均成長率の9・1%に比べても、中国は
それ以上だ。
そこで心配なのは、急激な経済成長に伴う弊害だ。例えば、大気や河川の汚染、公害病の蔓延、
都市と農村、都市部住民間の格差などだ。日本も環境汚染や公害病で苦しんだ経験がある。
日本の26倍の国土を持つ中国だけに、その汚染規模や実態はすさまじい。
米ジャーナリズム界で最も権威があるピュリツァー賞の今年の受賞作(国際報道部門)はウォールストリート・
ジャーナル紙の中国の経済改革に伴う弊害を克明にルポした10本の連載記事だった。工場の汚染排水垂れ
流しで鉛中毒に苦しむ甘粛省の子供たち、青蔵鉄道開通に伴う急激な経済開発により生活の激変を強いられる
チベットの人々、原因不明の病気を治すため公権力に立ち向かう福建省の医師、工事現場で負傷しても働き続け、
給料をピンはねされる河北省の出稼ぎ農民など、一貫して庶民の視点から経済改革に伴う弊害を見据えている。
日本でも中国の環境汚染や格差拡大に関する報道は少なくない。ただ、当局発表の統計数字の羅列(られつ)で
済まされていることが多いようだ。
調査報道が発達している欧米のメディアは必ずと言ってよいほど、庶民を登場させ、その活動を追う形で、
中国社会の矛盾をえぐるというスタイルの記事が多い。
私が最近読んだ本では、やはりピュリツァー賞を受賞したウォールストリート・ジャーナル紙の元北京特派員の
手による「ワイルドグラス」(日本放送出版協会刊)や英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」元北京支局長の
「中国が世界をメチャクチャにする」(草思社刊)などがある。前者は課税制度の矛盾に苦しむ多くの中国農民を
率いて政府に対する集団訴訟を起こし投獄され、“農民英雄”と呼ばれた弁護士や、中国では邪教とされている
宗教集団「法輪功」女性信者の死の原因を追究した話などが掲載されている。
後者は資源を買いあさり、模倣品を氾濫(はんらん)させ、環境を破壊した揚げ句、中国製品が世界中にあふれて、
各国の社会・経済秩序を破壊する中国の実像を描写している。
これらは中国の改革のひずみが人間の精神にも影響を与えているほか、世界中に波及していることを訴えている。
中国の自然破壊や人心の荒廃は、隣国の日本にとっても極めて重大な問題であることは論をまたない。(相馬勝)