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■過去からの脱皮…日本マンガとソフト・パワー
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【2007 世界は日本・アジアをどう伝えているか】
“焼酎大国”の韓国にワインブームが起きているという。4月17日付の韓国紙、朝鮮日報によると、
ワインの昨年度の消費量は2万7000キロリットルを記録し、前年度より8%増加。2002年に比べ
55%増えたそうだ。
ソウルのデパートでは今月、「ワイン、倉庫大放出展」が開催され、売りに出された6万6000本の
ワインに市民が群がった。
ブームの火付け役になったのが、ワインを題材にした日本のマンガ「神の雫(しずく)」(作・亜樹直、
画・オキモト・シュウ)だ。05年11月に韓国で翻訳が出版され、これまでに70万部を売り上げた。
3月7日付の中央日報は《マンガ自体も興味深いが、該博なワインの知識と各種ワインの紹介で、
日本ではもちろん韓国国内でもワインのバイブルとなっている》と紹介。
《韓国の酒文化を、焼酎や洋酒を混ぜて飲む「爆弾酒」からワインへ変える追い風となった》と伝えている。
日本のマンガの影響はそれだけにとどまらない。昨年末に公開され、観客動員数700万人を記録した
映画「美女はつらいよ」は、日本のマンガ「カンナさん大成功です!」(鈴木由美子著)が原作。
小説もベストセラー上位には日本の作品がずらりと並ぶ。4月5日付の中央日報は、韓国最大手の
書店のトップテンに日本の小説が6冊ランクされたのに対し、韓国の小説は2冊に過ぎなかったことを指摘、
《文学もまた日流だ》と、驚きとともに伝えている。
マンガ、アニメ、ゲームなど日本のポップカルチャーは今やアジア、米国、欧州のほか中東にまで拡大
する勢いだ。05年の日本のアニメ市場規模は約2340億円。世界で視聴されているアニメの約6割が
日本製というデータもある。
その文化発信の旗振り役となっているのが“マンガ好き”を自任する麻生太郎外相だ。外相の諮問機関
「海外交流審議会」は昨年11月に報告書をまとめ、マンガ作家らを「アニメ大使」として海外に派遣、日本の
ソフト・パワーの発信をさらに強化していくことを提案した。
ソフト・パワーとは「強制や報酬によってではなく、魅力によって、望む結果を得る力」だという。
米ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授は、「その源泉になるのは第一が文化であり、他国がその国の
文化に魅力を感じることが条件となる」と述べている(「ソフト・パワー」日本経済新聞社)。
日本の外務省幹部は「ソフト・パワーが強ければ、その国への好感度が増し、影響力、外交力がさらに
厚みを増す」と解説する。
「韓流ブーム」をしのぐ勢いの「日流ブーム」に対し、韓国メディアは不安を隠せない様子だ。
3月27日付の東亜日報は《国内に巻き起こっている日流ブームは尋常ではない》と伝え、
多様性と想像力が日本のポップカルチャーの強みだと指摘。
同28日付の朝鮮日報は《大衆文化界が日本のブームに巻き込まれ、
韓国大衆文化のDNAを支配してしまうのではないか》と懸念を伝えた。
中国も同様だ。国内のテレビのゴールデン・タイムに日本など海外のアニメ番組を放映しないよう規制するなど、
日本の文化浸透に神経をとがらせている。ただ、中国のメディアからは、拡大する日本のソフト・パワーに着目
する声も出始めている。
4月19日付の香港紙、明報は《海外に出た中国人は、世界に広がる日本の良いイメージに驚かされることがある。
…それは日本の持つソフトなイメージだ。…日本のアニメやゲームなどは全世界の若者の生活に入り込み、
世界規模の文化現象になった》と伝え、中国としてもソフト・パワー戦略を再検討すべきだとする論文を掲載した。
シンガポール国立大学のリズ・マクラクラン助教授は《日本はかつてこの地域を侵略した歴史を持つために
文化振興にはためらいがあった。しかし、考え方は徐々に変化しており…(日本は)自信を持ち始めている》
(3月31日付のシンガポールの英字紙、トゥデー)と述べている。
日本のソフト・パワーはもはや過去の心理的な制約にとらわれず、新たな潮流を生み出しているようだ。
(宇都宮尚志)