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■強制連行判決 企業は責任を果たせ
2007年4月28日
URLリンク(www.tokyo-np.co.jp)
最高裁は日中共同声明で中国が個人の戦争賠償も放棄したとして西松建設の中国人強制連行に
対する賠償請求を退けた。強制連行の事実や過酷な労働実態は認めており、企業の救済責任は
免れない。
日本と中華人民共和国の国交を回復した一九七二年の日中共同声明は「中国政府は日本に対する
戦争賠償請求を放棄する」と述べている。
これは、日本の戦後処理を決めたサンフランシスコ平和条約(五一年)や韓国との日韓請求権協定
(六五年)が「国及び国民」の賠償請求権を放棄したと明記しているのに比べ、あいまいさを残した。
このため九〇年代から中国で「政府は賠償請求を放棄したが民間は放棄していない」として賠償請求
が広がる一因になった。社会の開放で権利意識や抑圧されていた反日感情が強まったことが背景にあった。
これに対し、最高裁は共同声明もサンフランシスコ条約による戦後処理の枠内にあり個人の賠償請求も
放棄したと見なす初の判断を示した。中国政府は声明について日本の司法当局が中国の意見も聞かず
解釈を決めるのは不当だと反発している。
しかし、これによって共同声明の解釈をめぐる外交論争を再開し、日中関係を振り出しに戻すのは生産的
ではない。日中関係の大局に立った両国政府の慎重な対応を望みたい。
二〇〇四年の広島高裁判決は強制連行の事実や安全配慮義務違反、時効も成立しない不正義を認めた。
共同声明は個人の賠償請求を明記していないと原告勝訴を言い渡した。
西松の上告に対し最高裁は共同声明の解釈に限って受理した。しかし、判決では強制連行や過酷な実態
にも触れ、政府や企業の適切な対応を求めた。西松は勝訴したが責任そのものが否定されたわけではない。
同じ強制連行に対する賠償請求の花岡訴訟では被告の鹿島は和解し、被害者救済の基金に五億円を
拠出した。先例に学んで責任ある対応を取れば企業の信用は高まる。
中国政府は共同声明が民間の賠償請求を放棄したかどうか明言を避けてきた。放棄したとすれば民衆の
反発を買い、放棄していないとすれば請求が広がり日中関係を揺るがす事態になりかねないためだ。
判決で中国政府は苦境に追い込まれた。
今回の事態で国際社会は政府の対応にも注目している。慰安婦問題で、おわびを表明した安倍晋三首相は
米国で強制連行についても政府の姿勢を示し「美しい日本」の品格を示してはどうか。それが日中関係の危機
を救うことにつながる。