07/04/12 12:16:08
安倍晋三首相と中国の温家宝首相の会談で、あらためて日本と中国の「戦略的互恵関係」の
重要性が強調された。小泉政権下で冷え込んだ両国関係がさらなる改善に向かうのは喜ばしい
ことだが、東シナ海でのガス田開発や尖閣諸島の主権主張、「反日教育」のいびつな現状などを
見る限り、中国が具体的なかたちで、より良い方向への一歩を踏み出した形跡はうかがえない。
「戦略的互恵関係」は、現段階では絵に描いたモチに過ぎないのであり、これを題目だけに終わら
せない努力が求められる。
会談では、懸案のガス田開発問題をはじめ、北朝鮮の核開発や拉致問題などについて幅広く
話し合われた。北京の日本大使館が投石を受けるなどした大規模な反日デモから二年を経て、
ようやく首脳同士がデリケートな問題を論じ合う空気が醸成されてきた。安倍首相の訪中を機に、
日中のわだかまりが徐々に解け始めているのは事実だろう。
だが、日中関係に立ちはだかる壁はまだまだ厚い。そもそも「戦略的互恵関係」とは、共通の価値観
を持つ親密な国同士でなければ成り立ちようがない。相手の立場を理解し、引くべき所は引くという
意識がなければ、こうした関係を結ぶのは難しいからである。
会談で、温首相は、北朝鮮による日本人拉致や核問題などで日本の立場に一定の理解を示し、
安倍首相は、環境や省エネルギーなどで日本の支援を約束した。米国に次ぐエネルギー消費国
の中国にとって、世界一の日本の省エネ技術は、ノドから手が出るほど欲しいといわれる。それを
勘案すると、今回も実利を得ようとしているのは中国であり、日本が実際に手にしたものはまだない。
そのことを私たちは冷静に見ておかねばなるまい。
温首相は出国前、訪日目的について、日本の指導者と共通認識を得ること、日本国民に中国を理解
してもらうこと、の二点を挙げた。反日デモを契機に日本人の対中感情が著しく悪化したことを中国は
憂慮しているようだが、熱病にうなされたようなかつての日中友好ブームは、もう二度と戻らないだろう。
中国はそのことを理解し、互恵関係の構築に向けて、真摯に対応してほしい。
ソース:北國新聞
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