07/04/05 16:34:20
【安倍政権考】誤解と曲解に基づく批判 阿比留瑠比
「かつての定義である強制性について、それを証明する証言や裏付けるものはなかった。
その定義については大きく変わったということを申し上げたい」
安倍晋三首相は3月1日、官憲による慰安婦募集時の「強制性」について、記者団にこう指摘した。
これがAP通信などによって世界に配信され、海外メディアの異様な「安倍たたき」のきっかけとなった。
外務省幹部によると、AP通信の記事自体に「7、8カ所の事実誤認または誤解があった」ともいうが、
そもそも安倍氏の発言のどこに問題があるというのか。
■強制連行前提の報道
元慰安婦に謝罪と反省を表明した1993年8月の「河野談話」発出の前後、朝日新聞などは
日本軍による強制連行を当然の前提として記事を書いていた。92年1月11日付の朝日新聞は、
吉見義明・中央大教授が慰安婦問題に関する新資料を発見したとする記事の用語解説で、
「従軍慰安婦」について次のように説明している。
《太平洋戦争に入ると、主として朝鮮人を挺身(ていしん)隊の名で強制連行した。
その人数は8万人とも20万人とも言われる》
また、92年1月23日付のコラム「窓」では、慰安婦を自ら強制連行したとするただ一人の日本側証言者、
吉田清治氏の話をもとに、こうも書いている。
《(吉田氏が)以後3年間、強制連行した朝鮮人の数は男女約6000人にのぼるという》
だがその後、現代史家の秦郁彦氏の現地調査などの結果、吉田証言がでたらめだったことが
明らかになった。また、勤労動員された女子挺身隊と慰安婦は全く関係がない上に、秦氏の研究によると、
慰安婦の約4割は日本人であり、その総数は2万人~2万数千人だとされる。
当初の強制連行説が根拠を失う中で、吉見氏らが主張し出したのが、軍、官憲による慰安婦狩りなどを
示す「狭義の強制性」と、詐欺などに遭い、意に反して慰安婦とされた「広義の強制性」の区別だった。
安倍氏の発言は、こうしたこの問題をめぐる定義の変遷を言っているにすぎない。吉見氏と
連携しているように見える朝日新聞が、「狭義の強制性はなかった」とする安倍氏に対し、
今になって「分かりにくい」「潔くない」などと批判するのは、それこそ分かりにくい構図だ。
■「証拠なし」は以前から
政府は3月16日の閣議で、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を
直接示す記述は見当たらなかった」とする答弁書を決定した。従来の政府答弁を正式に確認した形で、
国内では特に注目されなかったが、これについても海外メディアは批判している。ただ、この見解は
何も安倍内閣独自のものではない。
97年3月の参院予算委員会などでも、政府は「政府が発見した資料、公的な資料の中には軍や
官憲による組織的な強制連行を直接示す記述は見いだせなかった」(平林博・内閣外政審議室長)と
答弁している。
河野談話を出した河野洋平氏(現衆院議長)自身も97年、自民党の「日本の前途と歴史教育を考える
若手議員の会」の会合で、「女性が強制的に連行されたものであるかは、文書、書類ではなかった。
本人の意思のいかんにかかわらず連れてこい、という命令書は存在しなかった」と認めている話だ。
朝日新聞は吉見氏も登場する3月28日付のコラム「人脈記」の中で《でも、安倍さん、慰安婦について
「強制性を裏付ける証拠はなかった」と強調することはなかったのでは?》と書いている。
だがむしろ、ごく当たり前のことを言っているのは安倍氏の方ではないだろうか。
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