07/03/31 16:13:43
航空自衛隊入間基地(埼玉県)に三十日、日本では米軍基地以外で初めて地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が配備された。
「北(朝鮮)の脅威」が配備を促したが、効果は依然、不透明だ。一方、今回の配備は急速に進む日米の軍事一体化の流れにある。
財界は歓迎するばかりか、先導役にも。無限に広がるミサイル防衛(MD)開発により、日本版「軍産複合体」がなし崩しに膨らみつつある。
(田原拓治)
PAC3配備を数日後に控えた西武池袋線入間市駅前。買い物中の主婦は「パトリオット? 聞いたことはあるけど」と配備には
ほとんど関心がなかった。
面積約三百ヘクタールの入間基地(四千三百人)は埼玉県入間市と狭山市にまたがる。戦前は旧陸軍航空士官学校で、
敗戦後は米軍ジョンソン基地。一九五四年の航空自衛隊創設に伴い、東部訓練航空警戒隊が置かれた。夏の花火大会、
秋の航空祭には地域住民も招く。
入間市議会(定数二四)で、今回の配備に反対したのは共産党の四人を含む五人だけ。その一人で無所属の山下修子市議は
「事前に発射が知らされず、命中しても破片がバラバラと住民に降ってくる。逆に『敵』の攻撃の標的となり、危険性は増すばかり。
住民不在の安全保障だ」と憤る。
だが、基地に慣れた市当局の反応は鈍い。市議会でも「防衛は国が決めること」と独自の見解は避け、PAC3の運用面でも
「(基地側から)配備は聞いているが、運用の条件などの話はしていない」(同市企画部)と受け身に徹する。
これまで、ミサイル探知レーダーの電磁波の影響や飛行禁止空域の設定などについては、国会でも質疑が交わされてきた。
防衛省は取材に「レーダーは上に向けるので住民への影響はない」「PAC3を航空法で定める違法な妨害物から除くよう国交省と
協議中」とのみ回答している。
■集団的自衛権や効果はあいまい
入間基地への配備は当初の「二〇〇七年度から」を前倒しした。昨年の北朝鮮によるミサイルと核実験が追い風になった。
日米の国防族、軍需産業の要人が会する「日米安全保障戦略会議」の第八回会議(東京・昨年八月)で、三菱重工航空
宇宙本部の西山淳一氏は「北朝鮮のミサイル発射によって、この間の対処などを再検討する必要があるのではないか」と発言。
結果は言葉通りになった。
その後、今月二十三日の閣議では部隊指揮官に迎撃判断を一任する「対処要領」が決められた。これが従来の文民統制に
抵触するのか否か、といった議論は“風”に飛ばされた。
精度や効果をはじめ、PAC3が一部を構成するMDシステムは日米共同で開発、整備されているが、それが憲法が禁じる集団
的自衛権につながらないのか、などの議論も押し流されている。
だが、MDの本家本元である米国では、ことし一月五日発表の「米議会調査サービス(CRS)報告書」の中に「(迎撃実験の
データについて)包括的で独立した検証はいまだ完成せず(MDを)正当化できないかもしれない」と効果に疑問を呈す記述が表れた。
先の戦略会議でも、石破茂・元防衛庁長官は「四、五割しか当たらないから『当たらない』と言えるのか」とその精度を評した。
ただ、集団的自衛権にかかわる米軍と自衛隊の連携については「米軍が日本を守ってくれる以上は必要悪」という雰囲気が強い。
この点について、立命館大の藤岡惇教授(米国経済論)は「米国にとってはグアム、ハワイ、本土の防衛が主眼。日本人の暮らし
を守ってくれるという見方は『幻想』だ」と断言する。
(>>2に続く)
ソース:東京新聞
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