07/03/28 04:17:18
■下村発言―首相のおわびが台無しだ
安倍首相の、いわゆる従軍慰安婦をめぐる発言の波紋がおさまらない。
発端となった今月初めの「強制性を裏付ける証拠はない」との発言が国内外で批判されて以来、
首相は強制性への言及を封印し、元慰安婦への「おわび」を繰り返し表明している。
来月下旬に初の訪米を控えていることもあるのだろう。93年の河野官房長官談話を継承する立場を鮮明にし、
ひたすら波紋の沈静化を図ろうとしている。
そんな首相の努力に冷や水を浴びせる発言が、下村博文官房副長官から飛び出した。
ラジオ番組や記者会見で「旧日本軍の関与」を明確に否定したのだ。
「日本は昔、(女性が)売られて女郎屋に行った時代があった。同じように親が娘を売ったことはあったと思う。
しかし日本軍が関与していたわけではない」
「軍の関与はなかったと私自身は認識している。直接、間接的に軍の関与は明らかでなかったというのが
97年の平林博内閣外政審議室長の国会答弁だった」
軍の関与を認め、謝罪した河野談話を真っ向から否定するような内容である。
官房副長官といえば首相官邸のナンバー3の要職だ。
その発言となれば、首相の真意を解説したと受け取られても仕方ない。
首相のおわびは台無しである。
理解に苦しむのは、軍の関与を否定する根拠に平林答弁を持ち出したことだ。
この答弁は河野談話の発表当時、「慰安婦の強制連行を直接示す政府資料は発見されなかった」ことを認めたに過ぎない。
「軍の関与はなかった」と言ったわけではない。
河野談話が認めるように、慰安所の設置や管理、慰安婦の移送に軍が関与したのは明白であり、
慰安婦の生活は「強制的な状況の下での痛ましいもの」だったことは否定しようがない。
強制連行があったのか、なかったのかにいくらこだわってみても、そうした事実が変わることはない。
そう考えるからこそ、首相は改めておわびの気持ちを表明しているのではないのか。
アジアや欧米のメディアで、当初の首相発言は驚きと怒りをもって報じられた。
最近では米国の有力紙ワシントン・ポストが「安倍晋三のダブル・トーク(ごまかし)」と題する社説を掲載した。
北朝鮮による拉致問題には熱心な首相が、日本自身の戦争犯罪には目をつぶっている。そう批判している。
「拉致問題は現在進行形の人権侵害だが、従軍慰安婦の問題は続いているわけではない」と首相は反論するが、
事の本質を見誤っている。
問われているのは、過去の日本が女性たちの尊厳と人権を深く傷つけたという歴史の事実に、
日本を代表する立場の首相がいま、どれだけ真剣に向き合えるか、という問題にほかならない。
「いま」の話なのだ。
首相は、慰安婦問題についての考えをもっと丁寧に語るべきだ。
ソース
URLリンク(www.asahi.com)