07/04/02 21:18:47 Hs9NVnof
>>376
次の日に勃発した第一次朝鮮戦争で、祖父の故郷は騒然となったのは言うまでもない。
家族は数日間、相談した結果、戦うより、祖父と一緒に安全な日本に逃亡することを選んだ。
南朝鮮労働党や北のスパイが、武装蜂起を住民に促しており
それに否定的な住民は、行方不明になる事件が相次いでいたし
南朝鮮軍も、スパイや共産党員狩りを行っていたのも理由の一つだった。
祖父を逃がした警察署長は、抵抗したために北のスパイに処刑されてしまった。
その逃亡のために漁船の調達を、金おじさんに金を出して頼んだ。
金おじさんは、自分の家族も一緒に日本に行くことを条件に、漁船を調達してくれた。
祖父の家族6人と金おじさん家族5人を乗せた漁船は夕闇に紛れて、対馬海峡を渡った。
ときおり夜空を米軍の飛行機が何機も飛んでいくのが見えた。
漁船は下関近くの海岸に到着した時は、朝だがまだ真っ暗だった。
漁船を下りた2家族は、腰まで水につかって海岸まで歩き、海岸で夜の明けるのを待った。
夜が明けてから、下関の駅に行ったが、周囲の日本人が祖父達一行をじろじろ眺めた。
着ている服で一目で密航鮮人とわかったからだ。
日本語のわかる祖父は金おじさんを連れて、周辺の日本人の家に押し入り金と服を調達してきた。
しかしその金では、2家族、東京までの切符は買えなかったので
列車が到着するのを待って、回りの日本人を押しのけて、乗り込んだ。
駅員も警察もいて制止してきたが、かまわず乗り込んだ。
(続く)