07/02/23 13:03:34
記者の目:硬直した日本の北朝鮮政策=大貫智子(政治部)
8日から6日間、北京で行われた北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議で、
日本政府は「拉致問題の進展がなければ(核問題を進展させる手段である)
北朝鮮へのエネルギー支援は行わない」との方針を貫いた。北朝鮮の核は
差し迫った安全保障上の脅威であり、拉致は人権と国家の主権を踏み
にじる行為だ。どちらも日本にとって極めて重い課題であるだけに、
核問題解決に後ろ向きともとられかねない今回の対応は正しかったのだろうか。
拉致の早期解決のためにも、政府は核問題との両立を図るべきだと思う。
「うちは拉致問題が進展すれば、核問題で進展がなくても支援するんだよ」。
北京で取材していて最も印象に残った日本政府関係者の言葉だ。
日本の「極端」な政策を自嘲(じちょう)気味に語る姿に、私は言葉を失った。
6カ国協議は毎回、全参加国による全体会合の後、米朝など2カ国や3カ国が
立ち話を含めて具体的内容を詰め、合意内容が固まれば再び全体会合を開く。
日本首席代表の佐々江賢一郎外務省アジア大洋州局長は05年9月の第4回
協議で、共同声明採択に当たり米朝間の調整役として奔走した。同年11月の
協議では、今回合意した「テーマ別の作業部会」の設置を提案、協議をまとめ
る上での「知恵袋」と呼ばれ、関係国の信頼も厚い。
しかし今回、日本は「支援に参加せず」の方針で臨んだため、協議での発言力は
低下した。北朝鮮は米国や韓国に対し「電力200万キロワット」などの要求を
突きつけたが、日本は間接的に聞いただけ。米中韓による詰めの協議が続いた10日、
韓国政府当局者は「今日は日本とは特に議論するイシュー(論点)がなかった」と
記者団に語った。
合意文書には、北朝鮮が60日以内に核施設を停止することなどが盛り込まれた。
朝鮮半島の非核化に向けた一歩と期待されている。だが、文書策定で日本が目指した
のは、見返りにエネルギーを提供する主体を書き込ませないことだった。6カ国の
合意という体裁を崩さず、「支援はしない」という日本の立場を両立させるには
玉虫色の表現が必要だった。
最終日の13日、首席代表による記念撮影で、佐々江氏が指定された立ち位置は
向かって左端。共同声明が採択された時も、昨年12月の前回協議でも、佐々江氏は
中央に立つ議長国・中国の武大偉外務次官の隣にいた。
6カ国協議で日本は、常に拉致問題と核問題のバランスに頭を悩ませてきた。
2度目の日朝首脳会談直後の04年6月の協議では、核問題の進展があれば
エネルギー支援を行うと表明。拉致問題は日朝2国間の協議での解決を模索した。
しかし、日朝関係は横田めぐみさんの「偽遺骨」問題で一層悪化し、昨年2月の
日朝包括並行協議は成果なく終わった。そして7月の北朝鮮によるミサイル発射。
日本は即日、万景峰(マンギョンボン)号の入港禁止などの制裁を実施し、
対話の糸は切れた。拉致問題を最重要課題に掲げる安倍政権の発足で、
対話路線への転換はさらに難しくなっている。
毎日新聞 2007年2月23日 0時56分
URLリンク(www.mainichi-msn.co.jp)
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