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6カ国協議:合意…全体像見えないままで発車
【北京・堀山明子】今回の6カ国協議で合意した核廃棄への「初期段階の措置」は、核廃棄の速度に応じて
見返り支援を増減させる独特の計算式を導入して、北朝鮮の非核化の加速を狙っている。しかし北朝鮮が
完全に核を廃棄するまでに参加国はどれほどの見返りを提供するのか、全体像が見えないままでの見切
り発車ともいえる。
今回の合意では、北朝鮮がやるべき非核化措置の中に「閉鎖」や「無能力化」という新たな概念が登場した。
閉鎖は核施設を封鎖して北朝鮮関係者の立ち入りを禁じることだ。無能力化は原子炉など核施設の核心部
品を取り除き、再稼働できなくする状態で、廃棄のスタート地点と位置づけられる。技術的な方法は1カ月以
内に開かれる作業部会で議論されることになっている。
94年の米朝枠組み合意では、核施設のスイッチを止めるだけの凍結だったため、北朝鮮は02年末、寧辺
(ニョンビョン)の実験用原子炉の凍結を解除した。今回盛られた閉鎖と無能力化は、核施設を再稼働できな
い状態に持ち込み、核兵器の増産を確実に止めることに狙いがある。
凍結しただけで年間50万トンの重油の見返りを得た94年合意とは異なり、無能力化を実施するまでの速さ
に応じて、見返り支援を増減させる「成果主義」を導入した。閉鎖から無能力化まで1年で移行すれば重油
100万トン相当のエネルギーを提供するが、半年に早めれば200万トン相当、3カ月なら400万トンと比例
的に増える。反対に2年かかれば50万トンにしかならない。
新方式の導入を推進してきた韓国の政府当局者は、「インセンティブ(刺激)と罰則を取り入れた点が94年と
異なる。閉鎖から何年かかっても動きがなければ支援はしない」と強調した。
一方で廃棄の対象となる核施設は、94年合意時点で対象とされた施設にとどまった。60日以内に「すべての
核計画を完全に申告する」と北朝鮮に課しはしたが、無能力化の対象は「実験用原子炉や再処理施設を含む」
と、プルトニウム関連施設を意識した文言だ。05年9月の6カ国協議の共同声明では、米国は濃縮ウラン計画
を「すべての計画」に含まれると強調したが、今回は問題を先送りした格好だ。
今回の合意は核兵器に言及していない。北朝鮮は昨年12月の6カ国協議では「核兵器は初期段階措置の対象
外」と主張しており、既に生産した核兵器の廃棄には見返りを迫る可能性が濃厚だ。
60日以内に北朝鮮核施設閉鎖と米国のテロ支援国家指定解除の「プロセス開始」が同時に行われることになっ
ているが、テロ支援国家への指定解除は拉致問題が進展しなければ難しい。
毎日新聞 2007年2月13日 23時32分
ソース:毎日新聞
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