07/02/10 20:29:05 2M0yve2Q
ある日本兵は少ない給料からなけなしの金を受付に払い、せめて死ぬ前に男として一度は女を抱いてみたいと粗末な慰安所の扉を開いた。
彼は東北生まれの貧乏育ちではあったが努力の末、東京帝国大学の入学試験に合格し学費免除の特例まで受けることが出来た。
将来は外交官となり世界を飛び回りお国に尽くすことが彼の夢だったのだ。
だが戦争はそんな彼の夢を打ち砕いた。
彼には故郷に二つ年下の幼馴染で小さい頃から将来を誓い合った許婚がいた。だが彼は戦争でお国のために死ぬ運命。
「お前を置いて戦争に行く僕を許してくれ。お前は誰か別の優しい人のところへ嫁入りして幸せになってほしい」
そう言い残して彼は日本を旅立った。二度と故郷に帰れぬことを覚悟しながら。
(中略）
案内された慰安所の一室を開く。相手は白人女性だということで少々面食らったが東欧への留学経験もある彼は透き通るように白い
肌の美しいポーランド人女性たちを思い出し、故郷の許婚に申し訳ないと思いつつ胸が高鳴り始めていた。
｢ハァイ」
扉を開くとそこには慎重190近い巨漢のオランダ女性が小柄な日本兵を見下ろしていた。
どんな戦場でも決して弱音を吐かなかった彼はそのとき初めて自らの運命を呪った。
「蘭印独立と日本兵」 加藤隆 民明書房