07/01/31 13:35:10
台北に、「猫好きが海外からも訪れるカフェ」があると聞いた。
日本ではドッグカフェなど多数あるし、キャットカフェも少しはある。
ただこれらは、「自分のペットを連れていく」のが主流なのに対し、
ここは10匹くらいの猫がゴロゴロ気ままに過ごしているというではないか。
台湾師範大学近くの静かな路地にある「極簡カフェ」(ジージェンカフェ)が、それだ。
実際に、足を運んでみると、間接照明の落ち着いた店内は、神保町などにもありそうな雰囲気のカフェ。
だが、そこここに、猫の絵や猫の小物が飾られていて、椅子の背もたれはかなりボロボロ。
ヤツらが思うさま爪をといでいるのが、ありありとわかる様子である。
そしてもちろん、本当に猫がいる。カウンターで寝てる猫や、アンプの上で心地よさそうにのびてる猫、
トイレ脇のカゴの中で寝てる猫……。
たまに、気ままに外に散歩に行く猫もいて、それでも地元のお客さんたちは、
特に気にかけるふうでもなく、まったりしている。
おそらくすぐ近くにある大学の学生だろう、テスト勉強や読書をする女の子が多い。
観光客にとっては「有名な猫カフェ」でも、地元の人にとってはフツウに居心地のよいカフェなのだろうか。
こちらもまったりとコーヒーを、と思った矢先、ふいに驚愕のサービスが訪れた。
「にゃあ」と愛らしい声が聞こえたかと思うと、猫が1匹足元にやってきて、緊張でかたくなる私の椅子にとびのり、
ニットのワンピースに鼻をすりつけたのである。
さらに、テーブルにのると、コーヒーのニオイを軽くかぎ、気ままに去っていった。
なんという思わせぶり! 周りの空気を乱さないよう、静かに興奮していると、また別の猫がやってきた。
そして、今度は私のひざにのり、丸くなると、ゴロゴロとのどをならし始めたのである。
ええー! 見ず知らずの人間ですよ? 過激すぎるサービスではないのか。
もう嬉しいやらわけがわからないやらで、へんな汗をかいて、なぜかメニューを確認したりする。
コーヒー160元(600円程度)で、こんなのアリ?
法外なサービス料をとられないか、カードは使えるのだろうかなどと、にわかに不安になってきた。
脈拍上がりまくり、アドレナリン出まくり(たぶん)。
キャバクラとかに行く男性の心境って、こんな感じだろうかなどと考えたりもした。
でも、値段は本当に表示通り。猫も、別に「義務」とか「接客」で来るわけではなく、
気が向いたときに来て、気が向いたときに去るだけのようだった。
たまたま私が着ていたニットのワンピース(若干、毛玉つき)が毛布のように快適だったのか。
猫の気持ちはわからないが、また台湾に来たら、絶対にここを訪れようと心に誓った。
もちろん毛布のようなワンピースを着て。
(田幸和歌子)
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