07/01/25 12:04:11
「美しい国へ」-この言葉を聞くたび、何かこそばゆい感じがする。安倍晋三首相が就任して
四カ月が過ぎた。年頭記者会見や先の自民党大会でも「美しい」を連発したが、慣れるどころか、
ますます違和感を覚える。
この形容詞は、極めて抽象的で情緒的な言葉だ。「美しい」に反対する人はいないだろうが、
何を美しいと見るかは一人一人異なる。中学校の作文ならともかく、国家運営の最高責任者
が使うにはふさわしくないのではないか。
いま世の中を見渡せば、所得格差の拡大、教育の荒廃、治安の悪化など、ぎすぎすして落ち着き
がない。国民は安心して暮らせる日本や世界を求めている。そんな時、「美しい国へ」と言われても、
落差が大きすぎて戸惑うばかりだ。内閣支持率低下の一因はここにもある。まして、タカ派、硬派の
はずの安倍首相が口にすると「勇ましさ」を隠すためかと勘ぐりたくなる。
もう一つ加えると、筆者は韓国にいたことがあるせいか「美しい国」というと「美国」を連想してしまう。
韓国語で「米国」のことだ。中国語でも同様に使う。
安倍首相は、防衛庁を防衛省に昇格させ、集団的自衛権の行使に意欲をみせ、憲法改正を強調する。
「戦後レジーム(体制)からの脱却」というが、かねて米国が強く日本に求めてきた安保政策と一致する。
首相が強調する「成長優先戦略」は、競争重視の新自由主義、米国流グローバル化に沿った政策である。
これでは「美しい国へ」ではなく「美国へ」とならないか。
今週末には初めての施政方針演説。せめてカタカナ語を極力減らし、美しい日本語でお願いしたい。
(小林一博)
ソース:東京新聞(「なあに、かえって免疫力が」で有名な新聞社)
URLリンク(www.tokyo-np.co.jp)