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これまで中国政府は第三世界を植民地支配して資源と経済収奪を繰り返す先進国を非難する一方、資本主義国家の
比較的整備された制度や法治、人権を尊重する伝統をほとんど無視するスタンスだった。しかし、アフリカ、中東、中南米
に着々と資源確保を進める中国こそ「新植民地主義」と批判されるほど、もはや発展途上国ではなくなり、大国の長所を
冷静に評価する客観的歴史観が必要な時期に来たともいえる。
欧米で中国脅威論、中国崩壊論などが噴出し、それを火消しするために鄭必堅中国改革開放フォーラム理事長が
提唱する「中国平和台頭論」や、同番組が同時期に露出度を高めていることに「中国共産党の歴史観が変化したと
過度の拡大解釈はすべきでない」(中国紙「中国青年報」付属紙「氷点週刊」停刊処分の発端となった歴史論文を書いた
袁偉時中山大学哲学系教授=香港誌「亜洲週刊」掲載)との手厳しい指摘もある。
注目すべきは、同番組を通し、中国独自の文化や伝統を最大限に活用する「軟実力」を重視し、中国政府が国家戦略
として組み込み始めていることだ。その急先鋒(せんぽう)となっているのが、中国語学習熱を世界的に広げる「孔子学院」
の欧米や第三世界での設立、少林寺の欧米への進出、中国内の観光名所(敦煌、青蔵鉄道など)を舞台にした欧米との
合作映画制作、アニメ振興政策などだ。
孔子学院は儒教を布教するのではなく、孔子の名を借りて中国語学習を外国人に啓蒙(けいもう)する中国語学院で、
韓国、日本、欧米、アフリカなど三十七の国・地域八十校で開学し、中国の伝統文化も教えている。少林拳発祥の地
として知られる河南省嵩山の少林寺は仏教寺院でありながら少林拳の普及、仏教の紹介を行うために九五年、
ニューヨークに寺を建立して弟子は四百人。演武イベントなどさまざまなサイドビジネスを展開し、米国内には
ヒューストンやロサンゼルスなどに寺や分館が設立されている。〇一年にはベルリンにもドイツ少林寺として寺を建立、
欧米での文化浸透を目指している。
また、中国政府は昨年七月、手厚い財政支援や厳しい放送規制をテコにアニメ大国である日本など外国企業の
下請けから脱して今後五―十年で同国を世界に通用する「アニメ大国」にすると宣言した。中国国家ラジオ・映画・
テレビ総局は国産アニメを育成するために〇四年以降、海外アニメの放送枠を制限。テレビアニメの放送枠は時間割
で国内作品を六割以上、作品数ベースで五割以上と規定した。これは日本アニメの締め出しに等しく、〇三年に輸入
された海外アニメは「キャプテン翼」など二十作品あったが、〇六年には「テニスの王子様」一作のみとなっている。
三億人超の子供を抱える中国国内市場はキャラクターグッズなど関連商品で巨額の利益を得られる
“打ち出の小槌(こづち)”。市場規模を現在の五千億円から日本と同等の二兆円規模に拡大する方針だ。
映画界においても、国産映画の海外興行収入は〇六年に十九億一千万元(約二百八十八億円)に達し、
中国政府は国産映画の海外進出を加速させ、文化面で国際影響力を拡大させようと意欲満々だ。
中国の軟実力を図る「文化輸出」効果は二十一世紀の大国を目指す国家戦略の中で巧妙かつ着実に拡大し、
大国としての自信を取り戻しつつ、日本の軟実力をしのぐ無形資産の蓄積、浸透を世界的に進めている。
ソース:世界日報 2007年1月11日
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