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【社説】2007年01月01日(月曜日)付
▼戦後ニッポンを侮るな 憲法60年の年明けに
キリマンジャロのような高山から、しだいに雪が消えつつある。
氷河はあちこちで「元氷河」になり、北極や南極の氷も崩れている。このまま進むと世界の陸地が
どんどん海になり、陸上の水は減っていく。
ニューオーリンズを襲った恐怖のハリケーンなど、最近の異常気象も、海水の温度上昇と無縁ではない。
大気中に増える二酸化炭素(CO2)を何とか抑えなければ、地球の温暖化はやまず、やがて取り返しの
つかないことになる。
米国の元副大統領アル・ゴア氏が伝道師のように世界を歩き、地球の危機に警鐘を鳴らしている。
1月に日本公開される記録映画「不都合な真実」は、それを伝えて衝撃的だ。
●地球と人間の危機
人間の暮らしを豊かにする技術の進歩が地球を壊していく皮肉。だが、深刻なのはそれだけではない。
人が人を憎み、殺し合い、社会を壊す。進歩のない人間の浅ましさが、いまも世界を脅かす。
今年の正月はイスラム教の「犠牲祭」に重なった。神に感謝してヒツジを犠牲にし、みなで食べる大祭だが、
イラクの人々はお祭り気分にほど遠くないか。戦争開始から4年近くたったのに、自由で民主的な国の訪れは遠く、
まるで自爆テロの国となってしまった。
市民の死者はすでに5万数千人。停電や断水は絶えず、石油は高騰。避難民は50万人に達し、
崩壊国家に近づいている。米英兵の死者も3千人を超えたが、兵を引けないジレンマが続く。ブッシュ政権は
中東の混乱に拍車をかけ、世界をより不安にさせてしまった。
ゴア氏とブッシュ氏―。6年前、大統領選の行方を決めたフロリダ州での開票は、世界の行方も左右した。
CO2削減のために決められた京都議定書にブッシュ政権は背を向けた。米国は圧倒的なCO2排出国なのに、
何と鈍感なことか。一方で、国際世論の反対を押し切ってイラク攻撃へと突き進んだ。軍事力への過信である。
●「新戦略」のヒント
この5月、日本国憲法は施行60周年を迎える。人間ならば今年は還暦。朝日新聞はそれを機にシリーズ
「新戦略を求めて」を締めくくり、日本のとるべき針路を提言する。ゴア氏が訴える危機と、ブッシュ氏が招いた危機。
そこにも大きなヒントがある。
悲願だった教育基本法の改正を終え、次は憲法だ。そう意気込む自民党の改憲案で最も目立つのは、
9条を変えて「自衛軍」をもつことだ。安倍首相は任期中の実現を目指すといい、米国との集団的自衛権を認めようと
意欲を見せる。
だが、よく考えてみよう。
自衛隊のイラク撤退にあたり、当時の小泉首相は「一発の弾も撃たず、一人の死傷者も出さなかった」と胸を張った。
幸運があったにせよ、交戦状態に陥ることをひたすら避け、人道支援に徹したからだった。それは、憲法9条があった
からにほかならない。
もし名実ともに軍隊をもち、その役割を拡大させていたら、イラクでも英国軍のように初めから戦争参加を迫られて
いただろう。そうなれば、一発の弾も撃たないではすまない。間違った戦争となれば、なお悔いを残したに違いない。
もちろん、国際社会が一致してあたる場合は知らん顔はできまい。テロ組織の基地を標的としたアフガニスタン攻撃
はその例だった。
自衛隊はどこまで協力し、どこで踏みとどまるか。「憲法の制約」というより「日本の哲学」として道を描きたい。
>>2くらいに続く
ソース:朝日
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