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堀喜美子著「従軍看護婦の集団自殺」
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「婦長さんがそれほどにまで私たちのことを考えて下さるなら申し上げます。最初私たちが
ソ連の病院に送られた時から、私たちは毎晩七八人のソ連の将校に犯されたので、
すぐに国際梅毒をうつされてしまいました。私も看護婦です。
今では大分悪化していることがわかります。こうなっては自分の体は屍に等しいのです。
どうしてこの体で日本に帰れましょうか。仮に今後どのような幸運に恵まれて日本
に帰れる日が来たとしても、この体では日本の土が踏めません。この性病がどんなに
恐ろしいものか十二分に知っています。暴行の結果うつされたこの性病を私はソ連軍
の一人でも多くうつしてやるつもりです。今は歩行も困難なくらいですが、それでも
頑張って一人でも多くのお客をとることにしています。これが敗戦国のせめてもの復讐です」
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飛び降りた三人の姿が堀婦長の視界から消えてものの一分もしないうちに、
「バーンという銃声、続いてもう一発」の銃声が鳴った。
誰かが、貨車の下の方だ、と叫んだ。何事かと堀婦長が立ち上がろうとしたその時、
「婦長さぁん、さようならぁ・・・」
と言う細井たか子さんの声が聞こえると同時に三発目の銃声が鳴った。
堀婦長は反射的に貨車を飛び降り自分の乗っていた貨車の下に目を注ぐと、
「うおぅー」と狼のような声を上げて走り寄った。後藤さんと荒川さんの身体を覆うよう
にして倒れていた細井さんの右手には拳銃が握られていた。
おそらく、気丈な細井さんが先に二人を射殺し、最後に自分のコメカミを撃ったことが、
堀婦長にはわかった。当然即死であった。
「わかる、わかるよう。あんたたち、こうする外なかったのね。こうしなければあの
忌まわしい記憶から逃れる術がなかったのね。ごめんね。・・・早く、楽になってね。
今度はもっと強い運をもらって生まれてくるのよ」
堀婦長はそう言って線路の砂利の上に座っていた。