07/01/09 16:32:49 CKfdWr9e
わたしたちはこの機関室で見ていられないものを見てしまった。一人の作業服
の水兵が天井のビーム(梁)に付いているフックに指でぶら下っている。全体
重を二・三本の指で支えるのだから当然支え切れずにずり落ちる。するとその
前の低い椅子に腰をおろした下士官が、鈎の手になった長い火掻き棒を水兵の
足に引っ掛けてゆっくり引き倒す。水兵はへなへなと引っ繰り返る。それはま
るで映画のスローモーション撮影のようだ。すると下士官が投げ遣りな口調で
言う。
「おいおい、水兵さんよう、誰も降りろとは言っとらんぜ。さあ、上ったり
上ったり」
水兵はのろのろ立ち上りフックをつかむが十秒も保たないでずり落ちてしまう
。また下士官が火掻き棒で引き倒す。またぶら下る。ずり落ちる。引き倒す。
その無限の繰り返しだ。