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「エイヤー！」「ウオー！」－。金沢市鞍月の県警本部の武道場に気合の入った掛け声が
響く。声の主は、犯人逮捕を想定した警察独自の競技「逮捕術」の訓練に励む若手警察官
達だ。十一月から警察担当になり、市民生活を守るべき警察官の“実力”を知りたくなった。
そう思って「特別強化訓練員（特練員）」として、県警を代表する猛者の特訓を体験した。
（報道部・谷岡聖史）
柔道場と剣道場が一面ずつの武道場に着くと、屈強な体つきの特練員十二人がすでに気
合十分の表情で待ち構えていた。全員が記者と同じ二十代だと聞き、気力だけは負けられ
ないと闘志がわいてきた。
まずはランニング。これなら楽勝だと思ったのも束の間、全力疾走の合間に腹筋や背筋、
太股上げ運動を繰り返すうち、五分後には周回遅れに。気合の掛け声を出したせいで酸欠
になり、めまいを感じる。やる気はあるのに体が動かない。準備運動で弱音をはく記者を見
かね、特練員から「谷岡、ファイト！」とげきが飛ぶ。
逮捕術は、柔道や剣道、空手を足して三で割ったような警察独自の競技。竹製の警棒を使
った打撃のほか、回しげりや関節技もある。監督を務める県警警務課の杉本卓也警部補
（３９）は「できるだけ相手をけがさせず、自分もけがをしないで逮捕するのが最大の特徴」
と教えてくれた。例えばダメージの大きい頭部への攻撃は禁止。凶器を持った犯人の逮捕
を想定し、様々な長さの武器の相手と素手で戦う種目もある。
特練員は野球やサッカーなどスポーツ経験者。とはいえ、逮捕術は県警に入ってから始め
た人ばかりという。記者だって元卓球部。負けてはいられない。面や胴などの防具を身に着
けると、気持ちが引き締まる。一列に並んだ特練員の横を走り抜け、「肩、肩、肩！」と大声
で叫びながら竹製の警棒を連続で打ち込む。息は苦しいが、まるで特練員の一員になった
ようで、爽快な気分だ。（続きは>>2以下）