07/11/16 15:05:00 Dta1FFGY0
■ 小さな誇り
オーストラリアの乾いた大地を疾走するトラックの車内。
「ところで相棒、バックミラーにかかってるこの銀色のメダルは何なんだ?」
「いや、ちょっとしたお守りみたいなもんさ」
「おい、ちょっと待てよ。これ、本物の銀メダルじゃねえか!」
「そんな目で見るなよ。あるスポーツの大会でもらったのさ。そう、俺は
この前のオリンピックに出たんだ」
「オリンピック? 冗談よしてくれ。あれは選びぬかれたスポーツエリートだけ
が出られる大会だろうが。お前みたいに一日中トラックを運転してる奴がどう
やってオリンピックに出るんだ?」
「それもそうだよな、ハハハ。」
「わははは」
しかし、遠い地平線を見る運転手の青い瞳には、あの一日の光景が焼きつい
ていた。ありあまる資金で高級ホテルに泊り、薄ら笑いを浮かべながら会場に
現れる東洋人の集団。彼らのほとんどが一年で百万ドル以上を稼ぐプロの野球
選手だという。
若いオージー達は燃えた。そして、全力で立ち向かい、ぎりぎりの勝利を掴
みとったのだ。たいていの人間が野球というものを知らないこの国では、誰も
彼らを賞賛しなかった。しかし、胸の奥で今も燃え続ける小さな誇りとともに
今日も彼はハンドルを握り続ける。