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■テレビがスポーツを殺す。
海老沢 泰久=文
2007年6月20日
アメリカやヨーロッパのスポーツのテレビ中継にくらべて、日本のスポーツのテレビ中継がおそまつなのは、
いまにはじまったことではないが、日本のテレビマンたちはなぜアメリカやヨーロッパに勉強に行かないのだろう。
それとも、大リーグやゴルフのマスターズやサッカーのワールドカップを見ても、あんなふうに中継したいと
考えるテレビマンはいないのだろうか。アメリカやヨーロッパのテレビは、そのスポーツの醍醐味ばかりでなく、
じつにとんでもないものまで映してわれわれを驚かせる。
これは1988年のフランスワールドカップのときのことだが、オランダとベルギーの試合の後半36分に、
オランダのクライファートにとつぜんレッドカードが出て退場になった。そのときはなぜそうなったのか
まったく分からなかった。というのも、その直前にベルギーの選手からファウルを受けて倒されたのは
クライファートだったのである。だが、やがてビデオが流されて分かった。クライファートはファウルされた
直後は何もしないでブラブラしていたが、両チームの選手が入り乱れての騒ぎが収まると、やにわにファウルを
した選手に近づいて肘打ちを食らわせたのだった。つまり、そのビデオを撮ったカメラマンは、こういうときの
クライファートはきっと相手を許さないだろうと知っていて、その動きをずっと追いかけていたのである。
なんという想像力と忍耐力だろう。ぼくはこういう映像を日本のテレビではいまもなお目にしたことがない。
かわりに聞かされるのは、アナウンサーの間の抜けた絶叫と解説者のおしゃべりだ。彼らはそれで試合の何を
伝えようとしているのだろう。どんなに人為を加えても、試合はけっしてその試合以上のものにはならない。
むしろ、人為を加えれば加えるほど、人為と現実の試合の乖離は大きくなっていくばかりだというのに。
しかし、彼らは試合に想像力と忍耐力を注ぐことはせず、安易な人為を加えることばかり考えている。
最近はそれがいっそうはなはだしくなっていると感じているのは、ぼくひとりではないだろう。
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