07/06/20 13:33:28 wiFlE6AT0
お母さんの思いで6年3組 嗣永桃子
幼い頃に父が亡くなり、母は再婚もせずに私を育ててくれた。
学もなく、技術もなかった母は、個人商店の手伝いみたいな仕事で生計を立てていた。
それでも当時住んでいた土地は、まだ人情が残っていたので、何とか母子二人で質素に暮らしていけた。
娯楽をする余裕なんてなく、日曜日は母の手作りの弁当を持って、近所の河原とかに遊びに行っていた。
給料をもらった次の日曜日には、クリームパンとコーラを買ってくれた。
ある日、母が勤め先からモーニング娘。のコンサートチケットを2枚もらってきた。
私は生まれて初めてのモー娘観戦に興奮し、母はいつもより少しだけ豪華な弁当を作ってくれた。
会場に着き、チケットを見せて入ろうとすると、係員に止められた。
母がもらったのは招待券ではなく優待券だった。
チケット売り場で一人1000円ずつ払ってチケットを買わなければいけないと言われ、
帰りの電車賃くらいしか持っていなかった私たちは、外のベンチで弁当を食べて帰った。
電車の中で無言の母に「楽しかったよ」と言ったら、母は「母ちゃん、バカでごめんね」と言って涙を少しこぼした。
私は母につらい思いをさせた貧乏と無学がとことん嫌になって、一生懸命にレッスンをした。
キッズオーディションに合格し、映画で主役も張った。
ZYXにも選ばれ、母にCDデビューを見せてやることもできた。
そんな母が去年の暮れに亡くなった。
死ぬ前に一度だけ目を覚まし、思い出したように「モー娘。のコンサートごめんね」と言った。
私は「楽しかったよ」と言おうとしたが、最後まで声にならなかった。