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◇長嶋茂雄が初めて語った「病状」と「夢」
「今年は勝つ。絶対に勝つ。三回言う。勝つ、勝つ、勝つ……オッケーィ!」
二月十六日金曜日。
長嶋茂雄は脳梗塞で生死の境をさまよって以来、実に三年ぶりに巨人軍宮崎キャンプを訪問した。
出迎えるナインを激励した言葉は、十三年前の九四年にリーグ最終戦で優勝を決めた、伝説の「10・8」
での名ゼリフを引用したものだった。
グラウンドに足を踏み入れるのも、飛行機に乗るのも三年ぶり。ナインを激励する直前、宮崎空港から
自らが命名したサンマリンスタジアムに到着した長嶋は思わずこう呟いたという。
「野球場はいいなあ」
当日朝の羽田空港から長嶋と行動をともにした、巨人OBの張本勲が語る。
「ミスターには今年はどうしても巨人に勝って欲しい、という気持ちが強くあったようです。
とにかく、同行したリハビリの先生もビックリしてましたよ。
打撃ケージのところで、一時間ほど行ったり来たりを繰り返し、時には『ナイスバッティング!』と大声を出す。
原監督が『張本先輩、ミスターうれしそうですね!』というので、思わず私も
『見てみい、あれが野球人の顔だ』と返しました。
私は家もすぐ近所だし、倒れてから何度も会って話をしてきたけど、あんな明るい顔は初めてですよ」
自由の利く左手でバッティングフォームをまねる。観客の声援に手を振り返す。北海道日本ハムから新加入した
アテネ五輪代表・小笠原道大の髭を剃ったあごを笑顔でなでる……。
午前九時半からスタジアムに滞在すること五時間半。「ファンの前で顔が引きつらないように」と
笑顔のリハビリまでやっていた長嶋は、持ち前のサービス精神でチームと観客を盛り上げ続けた。
観客の前では杖は一切使わなかった。
>>2以降に続きます。
ソース:週刊文春 3月1日号 36-40ページ (エマニエル坊やがテキスト化)